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第3回「TL統計 2024」。今回は恋愛経験や悩みなど、キャラクターの内面から深掘っていきます! 

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TL統計 2024

こんにちは。昨年の人気TLの単行本40冊分、264編を調査して、TLの傾向を分析していく「TL統計」の第3回。相変わらず数式の出ないお気軽な統計エンターテイメントのお時間です!

第2回ではヒロインとヒーローの属性を確認し、全体的に20代後半が多いことや、ヒロインはごく普通の会社員、ヒーローはもう少し幅の広い職業に就く高身長のキャラクターである傾向などが確認できました。

今回もデータを見ながら「TLあるある」を見つけてください!

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分析内容をチェック!

今回は、ヒーローの服装、恋愛経験値、外部からの評価、悩み、物語の進行ごとの関係性の変化、ライバルキャラについて深掘っていきます。

ファッションアイテムはオン・オフの切り替えに

図1 ヒーローの服装
図1 ヒーローの服装

まずはヒーローの服装から。いわゆる制服などの服装に対する“癖(へき)”をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。前回、ヒーローの職業について、会社員が37.5%、公務員が17.5%、会社役員が12.5%というデータを出しましたが……服装をまとめた結果を見ると、スーツ&ネクタイ率の高さに驚きます。会社員に限らず、弁護士、軍人なども含めてスーツ&ネクタイが多く描写されていました。現実世界では職種や業界にもよるもののノーネクタイが広がっていますが、TLの世界ではネクタイは重要な小物です。ネクタイは仕事に向かっている「オン」の状態の証であり、それを外すことによってプライベートな状態へと解放され、ビジネスマンから一人の男性へと変わっていくことを示すのに最適です。普段は真面目で清廉潔白なヒーローが、その仮面とネクタイを脱ぎ捨てて、男としてヒロインに相対するというそのギャップがヒーローの魅力を引き立てています。

年上のヒーローが仕事終わりにヒロインの元に駆けつけてきたシーン。キスをした後にネクタイを外す様子が艶っぽく描かれる(『君にそばにいて欲しい』無味子・井上美珠・駒城ミチヲ / Jパブリッシング)
年上のヒーローが仕事終わりにヒロインの元に駆けつけてきたシーン。キスをした後にネクタイを外す様子が艶っぽく描かれる
引用元:『君にそばにいて欲しい』© 無味子・井上美珠・駒城ミチヲ / Jパブリッシング

同様にメガネもベッドでは「外す」ようになっていました。「メガネも含めてキャラクターの魅力だから外してほしくない!」という癖の方もいますが、今回観測した作品ではメガネはベッドで外すものとして描かれていました。これもネクタイと同様に、オンの場からオフへと変身していくことを示すためのアイテムであることが分かります。

また同様に、制服(警官・軍人など)も、オンとオフを示すアイテムであるのでしょう。真面目なヒーローが、ヒロインの前でだけ見せるオフの姿……というギャップを描くことも、TLでは重要です。

過去の恋愛経験はどのくらい?

図2 ヒロインとヒーローの恋愛経験
図2 ヒロインとヒーローの恋愛経験

物語の開始時点での、ヒロインとヒーローの恋愛経験値について集計した結果が図2のグラフになります。

最初に、ヒーローの方が恋愛経験について描かれない傾向がある点について見ていきます。TLではヒロインが読者の視点となるキャラクターで、その内面や心理についても描かれます。セリフに出さなくても「男の人のカラダってこんななの!?」などと驚く心理描写があれば、恋愛の経験がほとんどないことがわかります。対してヒーローの心理描写は最小限で、経験などについて描かれることもあまり多くないということに起因しているのでしょう。

殺し屋なヒーローの仕事を不幸で恋愛もできなかったヒロインが偶然目撃し、「どうせ殺すなら希望くらい叶えてよ!」「…わかった」と、なぜか「結婚」することに。ヒロインの恋愛経験がないことは述べられているが、ヒーローは過去もよく語られない(『天然な殺し屋さんと不運なお嫁さん(仮)』卯月たける/プランタン出版)
殺し屋なヒーローの仕事を不幸で恋愛もできなかったヒロインが偶然目撃し、「どうせ殺すなら希望くらい叶えてよ!」「…わかった」と、なぜか「結婚」することに。ヒロインの恋愛経験がないことは述べられているが、ヒーローは過去もよく語られない
引用元:『天然な殺し屋さんと不運なお嫁さん(仮)』(C)卯月たける/OrangeVox/プランタン出版

そこを踏まえて見ていきましょう。ヒロインは恋愛経験がないか、あまり多くないという形で経験が語られています。今回データを取ってはいませんが、恋愛経験があるヒロインでも、ほとんどの場合、過去の恋愛にあまりいい思い出を持っていませんでした。例外は、昔付き合っていた相手と再会する「復縁もの」くらいでしょうか。過去の相手については、物語内で「今回のヒーローとの恋愛は極上のものであり、過去の彼氏とは比べ物にならない」という形で対比をするために描かれる印象があります。

年下のヒーロー榊くんは、交際経験はないが、アダルトな動画やマンガなどから知識を得て、先輩ヒロインが何も考えられなくなるくらいまで「満足」させてしまうポテンシャルを持っている(『仕事ができない榊くんは夜だけ有能』ぽつねんじん / viviON)
年下のヒーロー榊くんは、交際経験はないが、アダルトな動画やマンガなどから知識を得て、先輩ヒロインが何も考えられなくなるくらいまで「満足」させてしまうポテンシャルを持っている
引用元:『仕事ができない榊くんは夜だけ有能』© ぽつねんじん / viviON

また、ヒーローが未経験の作品は少なく、ある程度以上の経験があるように描かれる傾向があります。経験について言及がない場合も多いですが、その場合でも事に及ぶ際は非常にスムーズで、過去に経験があることがうかがえます。これはやはりヒーローには「慌てないでリードして欲しい」という期待があるとともに、「過去の彼女と比較して欲しくない」という面もあるのだと考えられます。「初めて」というヒーローもいましたが、最初からヒロインを満足させられるハイスペックの持ち主ばかりでした。ヒーローには女性に対しての熟練さと、過去の女を匂わせない清廉さが求められているとも言えるでしょう。

サブキャラクターから読み取れるヒーローのハイスペっぷり

図3 ヒロインとヒーローの外部からの評価
図3 ヒロインとヒーローの外部からの評価

漫画において、キャラクターの能力を測る方法はそう多くはありません。戦闘力を測るように恋愛力を測る道具があればいいのですが……。そのため、ここでは外部からの評価で能力を測るという手法を使います。各キャラクターは、外部から評価されています。サブキャラクターからの賛辞であったり、噂としてヒーローやヒロインが認識していたりと、様々な描かれ方でキャラクターの評価がされているので、それを集計します。ヒロイン個人の感想などは除いて、他のキャラが言っていることを対象にしました。

この外部からの評価で、ヒロインやヒーローが盲目的に恋愛しているのではなく、現実に能力が高い相手を選んでいる、と読者も思えます。「周りからもイケメンだと思われている」「仕事ができて将来性が高い」など、他人から見てもうらやましいと思える相手かどうかを測る、ということでもあります。

ヒロインも企業を経営している才媛であるが、ヒーローは日本屈指のIT企業のCEO。お互いに仕事ができるが、他人との関わり方に悩みを持っていて、結婚せずに子どもを作る、という契約を交わす(『孤高のCEOと子作りすることになりました!』吉桜美貴/乃斗ナツオ/アルファポリス)
ヒロインも企業を経営している才媛であるが、ヒーローは日本屈指のIT企業のCEO。お互いに仕事ができるが、他人との関わり方に悩みを持っていて、結婚せずに子どもを作る、という契約を交わす
引用元:『孤高のCEOと子作りすることになりました!』©吉桜美貴・乃斗ナツオ/アルファポリス

ではグラフを見ていきます。まず、全体的にヒーローの方が評価が高い傾向にあります。やはりTLは、ハイスペックなヒーローがヒロインのことを愛する、というのが王道パターンになっているため、周りからの評価も描かれやすいのでしょう。その中でも特に「仕事が有能である」という部分については、実に7割以上の作品で描かれていました。仕事ができる、というのは、周囲から評価されたまっとうな人間であることを保証しつつ、その後も安定した生活が営めそう、という期待が持てる属性なのだと思います。現実離れした経済力を持ったキャラクターや、メディアなどで注目されているキャラクターも登場しましたが、それよりも「仕事ができる」という現実的な部分に安心感を得られるのだろうと思います。

化粧で「武装」することで自分に自信を持ったヒロイン。周囲から男に媚を売っていると誤解されている(『あなたの恋する 嫌いなわたし』crow / みぶね / ブライト出版)
化粧で「武装」することで自分に自信を持ったヒロイン。周囲から男に媚を売っていると誤解されている
引用元:『あなたの恋する 嫌いなわたし』© crow / みぶね / ブライト出版

ヒロインについても、最も評価されているのは仕事についてでした。容姿が評価されている場合もありますが、それは「容姿だけで仕事はできない」というサブキャラクターからの揶揄(でもヒーローだけは仕事を正当に評価してくれる)という形が見られました。やはり仕事ぶりを評価されるというのは、現代日本において大きな価値を持つのだと認識させられます。

続いて、悩みの面からキャラクターの内面を測っていきます。

図4 ヒロインとヒーローの抱える悩み
図4 ヒロインとヒーローの抱える悩み

どんなことに悩んでいるのか、そしてその悩みをどう解決していくのかというのもキャラクターを表現する上で重要な要素となります。そういった悩みを、「愛の力で乗り越える」というのがTLの王道のパターンになっていると考えらえます。

まず全体的に、ヒロインの悩みが描かれる傾向にあります。これは、先ほど恋愛経験の項目で述べたように、ヒロインの方が主人公として内面が描かれやすいということに起因します。「元カレともうまくいかなかった……私に恋愛は向いてないのかもしれない……」というモノローグがあれば、恋愛経験あり、恋愛の悩みあり、として集計できるので、ヒロインの方がヒーローよりも悩みが多くなります。また、TLではヒロインが主人公であり、彼女の悩みや不満を乗り越えるというのが物語の基礎になっていることからも、ヒロインの方が悩みを抱えやすい、ということが推測できます。

ヒロインの悩みとしては「自分には恋愛経験もなくて20代後半だ……」などの恋愛関係の悩みが多くなっています。ここには身体的な悩みとして「こんな容姿だと愛されない」や「好きで胸が大きくなったんじゃない……」など、恋愛にも関わる悩みも絡んできます。

ヒロインは学生の時に両親に認められたかったが、当時の彼氏に依存し、その依存が怖くなって逃げるように別れた。そしてその9年後、元カレと再会して……という復縁もの。家族への悩みや、9年間ろくな彼氏ができなかったことへの悩みなどが描かれている(『復縁なんていたしません!』竹輪つぼみ/ブライト出版)
ヒロインは学生の時に両親に認められたかったが、当時の彼氏に依存し、その依存が怖くなって逃げるように別れた。そしてその9年後、元カレと再会して……という復縁もの。家族への悩みや、9年間ろくな彼氏ができなかったことへの悩みなどが描かれている
引用元『復縁なんていたしません!』竹輪つぼみ/ブライト出版

また、それとは別のベクトルになりますが、仕事の悩み、家族の悩み(毒親や結婚を急いてくる親など)、恋愛とは直接の関わりがない自己実現に関わる悩みも描かれます。しかし、それらもヒーローとの関係を深める中で解決していく……というのがTLの王道の流れです。たとえば、仕事面なら「同僚とうまくいっていない」などの悩みを持っているヒロインがいます。そういった悩みを上司であるヒーローがキャッチして、周囲との橋渡しをしてくれたり。たとえば、家族とうまくいっていないために家庭を作るのが怖いというヒロインの悩みを聞いて、ヒーローが自分たちなりの家族を築いていこうと提案してくれたり。ヒーローが様々な形でヒロインを励ますストーリーがいくつか見られました。

忍びの里で育ったヒーロー。彼が幼いころから見守ってきたヒロインに対して恋心を自覚。同じ相手に恋心を向ける兄にヒロインを娶らせないために、嫌がっていた頭領の座を継ぐことを告げる。仕事に対しての悩みと、恋愛に対する悩みが反目するパターン(『忍ぶ恋ほど 好きすぎる旦那さまに溺愛されてます?』© 鶴来いちろ / ブライト出版)
忍びの里で育ったヒーロー。彼が幼いころから見守ってきたヒロインに対して恋心を自覚。同じ相手に恋心を向ける兄にヒロインを娶らせないために、嫌がっていた頭領の座を継ぐことを告げる。仕事に対しての悩みと、恋愛に対する悩みが反目するパターン
引用元:『忍ぶ恋ほど 好きすぎる旦那さまに溺愛されてます?』© 鶴来いちろ / ブライト出版

ヒーローの悩みについては、基本的にヒロインとの関係性について悩むパターンでの恋愛悩みがほとんどでした。「ずっと昔から好きだった。どうにか振り返ってほしい」や「上司が部下に対してこんな気持ちを抱いていいんだろうか」などの悩みが多かったです。これらはヒロインとの関係が深まっていくうちに解決される悩みであります。もちろんヒーローにも仕事についてや、家族に対する悩みを持っている場合もありますが、ヒロインに比べて質が違っていた印象があります。仕事に対する悩みでいえば、ヒロインの悩みが「職を失って食べていけない」とか「今の能力のままじゃ辞めさせられちゃうかも!?」といった今後の私生活に大きく関わる悩みが多いのに対して、ヒーローの悩みは「自分の管理する部署の雰囲気が少し悪い」、「同業他社の動きが気になる」、「社内で不正が行われているかもしれない」など、そういったヒーローの私生活とは切り離された部分での悩みが多く見られました。物語の筋としては、ヒーローの悩みはメインにはならず、ヒーローに等身大の魅力を持たせるためのものなのだと思います。

単行本1巻の序盤から終盤にかけて、関係性はどう変化する?

図5 物語の進行ごとの関係性の変化
図5 物語の進行ごとの関係性の変化

物語の進行ごとに関係がどう変化していくのかをグラフ化してみました。今回は単行本第1巻を集計対象としたのですが、収録されている話数がまちまち(3~8話)であったため、「第1話」と単行本収録最終話(おまけ除く)を「終話」とし、それ以外を「中盤」として一つにまとめて、グラフを作成しています。「1話始」が物語の開始時点、「終話終」が単行本のラスト、ということになります。なお、今回、恋人関係としたのは本人たちが恋人であると認識している、もしくは婚姻関係にある場合として集計したので、「強制結婚・契約結婚」も恋人関係に含まれています(強制結婚ものは、その後にゆっくりと心を通わせて真の恋人関係になったりするので切り替わりを集計しにくくあり、今回はそのように集計しました)。

まず、物語の始まりは知人関係からのスタートが全体の6割(残りの4割程度は初対面)となり、恋人関係からのスタートはほとんど見られません。唯一あったのが「ヒロインが契約結婚していたが記憶喪失」というパターンで、基本的に物語の中で関係が進んでいく形になっています。身体の関係についても、最初からあるのは上記の記憶喪失ものと元カレとの復縁ものくらいで、「最初から円満な恋人同士」というパターンの物語はありませんでした。TLにおいては、恋愛関係の維持よりも、恋愛関係を成立させていく、という方向が強いことがわかります。

双子の幼馴染との同棲が急遽決まり、そのまま二人に押し倒されてしまったヒロイン。「こんなのダメだからね」とは言いつつ、その後も双子のどちらとも恋人にならないまま関係を続ける(『幼馴染は一卵性の獣』あわいぽっぽ/さくら蒼/笠倉出版社)
双子の幼馴染との同棲が急遽決まり、そのまま二人に押し倒されてしまったヒロイン。「こんなのダメだからね」とは言いつつ、その後も双子のどちらとも恋人にならないまま関係を続ける
引用元:『幼馴染は一卵性の獣』©あわいぽっぽ/さくら蒼/笠倉出版社

そして、第1話の終わりで恋人関係になるのが3割程度でした(強制結婚系がそのうちの半分程度)。そして、全体の8割以上が触れる以上の体の関係になるというデータが出ました。話の続きを読んでもらうためにも、まず1話で「山場」を作っておくということも重要なのでしょう。全体を通して言えば、体の関係が先で、その後に心の関係を構築していく、というのがTLでは一般的な流れであるようです。また、体の関係でも最初は触るだけで、一線を越えない、という形がグラフからも読み取れます。これは関係が深化していく様子を示すために最初は一線を越えずに、触れるだけという形にしているのだと想像できます。

結婚せずに子どもが欲しいと、お互いに同意して子作りするだけの関係から始まったが、ヒロインは「ヒーローには本当に想っている女性がいる」と勘違いする場面。体の関係から始まって、徐々に惹かれていくという例(『契約妊活婚! 隠れドSな紳士と子作りすることになりました』小牧夏子/藍川せりか/アルファポリス)
結婚せずに子どもが欲しいと、お互いに同意して子作りするだけの関係から始まったが、ヒロインは「ヒーローには本当に想っている女性がいる」と勘違いする場面。体の関係から始まって、徐々に惹かれていくという例
引用元:『契約妊活婚! 隠れドSな紳士と子作りすることになりました』©藍川せりか・小牧夏子/アルファポリス

中盤から終盤にかけて関係が深まり、1巻の終盤では触れる関係性が100%になりますが、一線を越えるのは87%となっています。これはその後の「第2巻」以降に続けるためでしょう。今回の集計対象の7割が続刊を前提にしたストーリーとなっており、単行本1巻の時点ではまだこれから関係を深める「余地」を残しているのだと考えられます。知人のままである物語も4割あり、第2巻以降でその結末が描かれることを期待すると、自然と購入ボタンを押してしまうのかもしれません(押しました)。 いずれにせよ、恋人として成立するのは、身体の関係が深まった後、という流れが読み取れます。これはTLならではのファンタジーと言えると思います。たとえば男性向けでは「身体の関係」だけを続ける男女関係が描かれることもありますが、TLではそういった身体の関係だけを求めるというパターンは見られず、そこから心の関係を深める方向にいく、という指向が読み取れます。

物語を盛り上げる、恋のライバルの描かれ方(男女別)

図6 ライバルの描かれ方
図6 ライバルの描かれ方

ヒロインとヒーローの関係を描いていくうえでスパイスとなるのが恋のライバルキャラ。全編での登場の割合を調べてみました。まず全体の作品の4割程度で男性ライバルが、2割で女性ライバルが描かれていました。ただエピソード単位で見ていくと、10~16%とそれほど多くはありませんでした。物語の中で描いてもいいけれど、全てのエピソードで必要というわけではなく、物語に起伏をつけるために起用されている、という部分はあるのかもしれません。描かれ方としては「当て馬」「かませ犬」「引き立て役」という印象が強いです。ライバルはヒーローの魅力を引き立てる形で登場するようになっていました。

クズ男系ライバルキャラ。ヒーローが、いかにスペックが高いのかを語ってくれている。比較「年収一千万(百万の単位を四捨五入すれば)」と言っているあたりが悲しい(『エリート自衛官に溺愛されてる…らしいです? もしかして、これって恋ですか?』権田原/にしのムラサキ/アルファポリス)
クズ男系ライバルキャラ。ヒーローが、いかにスペックが高いのかを語ってくれている。比較「年収一千万(百万の単位を四捨五入すれば)」と言っているあたりが悲しい
引用元:『エリート自衛官に溺愛されてる…らしいです? もしかして、これって恋ですか?』©にしのムラサキ・権田原/アルファポリス

例えば元カレキャラが登場して、クズっぷりを出して、ヒーローは格の違いを見せつけたり、またライバルがヒロインの手を強引につかんだところでヒーローが助けに来たりと、ヒーローがいかにいい男なのかを強調するといった役割を持っている場合が多かった気がします。ハッキリと比較できるシーンが必ずしも無いため、集計はしていないのですが、ヒーローとライバル男性キャラを比較すると、ヒーローの方が高身長である、という傾向も見られて、なかなかに興味深かったです。

対して女性ライバルキャラは、場をかき回すような活動をしていました。例えばヒーローのストーカーになってヒロインを攻撃したり、ヒロインに嘘をついてヒーローに対して不信感を抱かせたりと、そういった役割を負っていました。

これらライバルキャラの活躍(?)はそれほど多くはないですが、中には印象的なライバルキャラもいて、(ヒーローとくっつくんだろうな……という安心感前提は持ちつつ)恋愛マンガとして続きが気になるキャラクターも登場していました。

まとめ

TLではヒーローの魅力をどう描くのか、という部分に力が置かれているのがわかりました。例えばヒーローがヒロインの前でだけ見せるオフの服装であったり、恋愛経験についても、あまり経験を語らず、しかしスムーズにヒロインをリードしたり、また、仕事の能力が高かったり、ライバルキャラと比べて完成されたキャラであったりなど、様々な面でヒロインを支えるキャラクターであることが示されていました。

そうしたヒーローと、まずは体の関係からスタートし、徐々にヒロインの心を解きほぐし、悩みなどを解決していく、という流れが見えました。

次回では、ヒーローとヒロインの感情の流れや、具体的な接触頻度について見ていきます。どうぞお楽しみに!

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Writer
牧田翠

マンガの表現をひたすら数えて語る統計エンターテイメント同人誌「エロマンガ統計」を2007年から執筆する野生の研究者。マンガ、ゲーム、ラノベ、BL、同人誌などにおける描写を集計し、分析している。

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