TL作品ではヤクザヒーローが大人気！ なので刺青が入ったヒーローに慣れている読者も多いはず。
今回ピックアップする『墨入り幼なじみの束縛がツライ』（愛染マナ）は、タイトルだけ見ると「墨入りってことは……ヒーローの職業はヤクザかな？」と思うかもしれません。
正解は、ヤクザではなくタトゥー彫り師！
全身に美しいタトゥーが入った彫り師と、一途で不器用なOLの、幼なじみ同士の恋愛を描いた、本作の魅力をご紹介します。
『墨入り幼なじみの束縛がツライ』ってどんなお話？
本作のヒロインは、ショートカットが可愛い社会人1年目のOL・七瀬（ななせ）。
会社の飲み会の帰り、七瀬が男の先輩と話していると、幼なじみで彫り師の瑠偉（るい）が「七瀬に触らないでもらえます？」と保護欲全開で登場するところから物語は始まります。
心配性の瑠偉は七瀬を迎えにきていました。ふたりの帰り道は一緒。
そう、瑠偉と七瀬はルームシェアをしているのです。それも4年以上！
それって同棲してる恋人同士じゃないの!?
そう思いますよね？ でも七瀬と瑠偉の関係は幼なじみ、もしくはルームメイト止まり。
七瀬は瑠偉に片思いをしていますが、4年以上ルームシェアしても瑠偉と“そういう雰囲気”になったことがなく、きっと自分のことを「同い年の妹のように思ってる」と考えています。
実は七瀬には、中学生の頃、変質者に襲われかけ、腕に怪我を負ったというつらい過去があります。
事件が起きる直前、一緒に帰宅していた瑠偉は「立ち読みしてくから先帰ってて」と七瀬をひとりにしてしまいました。
そのことで罪悪感を抱いているから、瑠偉は自分に過保護に接する……そう信じていた七瀬ですが、意を決して瑠偉に思いを伝えます。
七瀬の告白を聞いた、瑠偉の答えは――？
見どころポイント
『墨入り幼なじみの束縛がツライ』は、さまざまな魅力がある作品です。
なかでもぜひチェックしてほしい「瑠偉の重い愛」「幼なじみ同士の恋愛ストーリー」「漫画家・愛染マナさんの画力」という3つの見どころを詳しくご紹介します。
全身タトゥー入りアンニュイ男子の、隠しきれない重い愛
TL読者なら、あらすじを読んだときにお気づきのことと思いますが、もちろん瑠偉も七瀬が大好き！
いえ、大好きという言葉では言い表せないほど、七瀬に対して一途で重い感情を長年にわたり抱いています。
そもそもルームシェアをしたのも瑠偉のゴリ押し。七瀬が大学進学を機に上京する際に、七瀬の親を説得して親公認のルームシェアに漕ぎ着けました。
七瀬との会話で知らない名前が出てきたら性別を確認し（女ならOK！）、会社の飲み会があれば迎えにいき、周囲を牽制します。
なかなか幼なじみという関係から一歩踏み出せなかったのも、七瀬を大切に思うからこそ。
七瀬が変質者に襲われたトラウマから回復したことを確信できず、「自分の思いが七瀬を傷つけるのではないか」と恐れていたのです。
全身に美しいタトゥーが入っており、無口でアンニュイな雰囲気も相まって、近づきづらい感じのする瑠偉。
でも、彼氏になる前から束縛してしまうほど七瀬を大切にする姿を見ると、TLの醍醐味である胸キュンを存分に味わえます。
その重い愛を、ぜひ読んで確かめてみてください。
幼なじみルームメイトから恋人になっていく過程
実は、本作はもともと読み切りだったのですが、好評を博して連載化された作品。
なので第1話、つまり読み切りだったエピソードで七瀬と瑠偉は結ばれます。
第2話以降では、ふたりの仲が幼なじみのルームメイトから恋人へと変化・深化していく過程が丁寧に描写されています。
特に物語のいいアクセントになっているのは、第3話で登場する瑠偉の兄・璃久（りく）！
チャラくて自由人、でも明るくて人懐っこい璃久は、無口で内向的な瑠偉と対照的な存在です。
璃久によってコンプレックスを刺激された瑠偉が、嫉妬で七瀬に冷たい態度を取ってしまう（そしてその後ラブラブな展開に突入する）のは、読者にとって、まさにご褒美！
また瑠偉と七瀬がついに付き合うことになったと知ったとき、璃久は泣きながら「小さい頃からず〜〜〜っっとネチネチネチネチ片思いしてたもんな」と瑠偉を撫でくりまわすのですが（笑）、その「ネチネチネチネチ片思い」のエピソードの一端も明かされます。
微笑ましい幼少期の思い出、七瀬の耳にピアスの穴を空けた後の、切なくも悶々とした気持ち……。
読者として大変美味しゅうございました！
1巻の終わりには新たなイケメンキャラも登場します。
彼が今後どんな行動をし、それによって七瀬と瑠偉の関係がどう変わっていくかも楽しみです。
作者・愛染マナさんの美麗な画力とデザインのカッコよさ
見どころポイント、3つ目は作者の愛染マナさんの画力の高さとデザインのカッコよさです。
愛染マナさんは少女漫画、TL、BLと多様なジャンルを股にかける多彩なマンガ家。
女装をテーマにしたマンガ「俺の美女化が止まらない!?」が2023年にテレビ東京でTVドラマ化されたので、知っている方も多いかもしれません。
かわいい・カッコいいキャラクターを、美しく妖艶な線で描き出すことに定評のある作家さんです。
本作の登場キャラたちもご多分に漏れず、かわいくて＆カッコよくて、眼福。
特に瑠偉はその妖艶さが目を惹きます。
瑠偉の体を彩る、繊細かつ力強いデザインのタトゥー。
センター分けにした前髪からバックまで一直線にカットした個性的な髪型。
過保護で一途というのはTL漫画のヒーローとしては王道の性格ですが、それだけにとどまらない魅力が瑠偉から感じられるのは、愛染マナさんのデザインの力によるものだと思います。
まとめ
全身タトゥー入りのアンニュイ彫り師と、その幼なじみのOLが恋人になった“後”のエピソードが堪能できる本作。
単行本化もされており、1巻は2023年4月28日に発売されました。
そして発売から1カ月も経たない5月16日に、愛染マナさんのX（旧Twitter）で重版したことが発表されています。
2023年12月15日には2巻も発売予定とのこと！
読み切りだけの予定だった作品が反響を受けて連載化し、1巻はすぐに重版した人気作。その魅力をご紹介しましたが、いかがでしたか？
「タトゥー男子」「幼なじみ」「一途な重い愛」といったキーワードに、もしピンと来たら、ぜひ手に取ってみてください。
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