今回ご紹介する作品は『君を抱くのは仕事だから 雇い主は変態小説家』。
すごいタイトルですよね(笑)。「変態小説家」のインパクトが強い!
でも、本作はまぎれもなく“小説家”のお話……もっと言うと、作家のエゴが描かれた面白いTL漫画なんです。
一風変わった本作の魅力を早速見ていきましょう♪
あらすじ
本作のヒロインは一鈴(にのまえ すず)。
小説家・佐々木京介(ささき きょうすけ)の作品を愛し、「この人と一緒に本を作りたい!」と編集者を志している23歳の女性です。出版社への就活がうまくいかず、喫茶店でアルバイトしていたとき、小説家のアシスタント業務の求人を見つけました。
なんと雇用主の名前は「佐々木京介」!
憧れの作家のアシスタントができると喜び勇んで面接に向かったところ、思わぬ落とし穴が。
佐々木京介というのは雇用主の本名であり、小説家としてのペンネームは九鬼令苑(くき れおん)。
つまり小説家の佐々木京介とは同姓同名の別人!?
しかも九鬼令苑は官能小説家で、彼の制作アシスタント=彼とセックスすること!?
ミステリアスな官能小説家と文学好きな女性の、カラダから始まるちょっと歪んだラブストーリーが展開されていきます。
登場人物
一鈴(にのまえ すず):編集者になり、佐々木京介と一緒に本を作ることを目標にしてきた。何事にも一生懸命で一途。
佐々木京介(ささき きょうすけ):小説家としてのペンネームは九鬼令苑。売れっ子の官能小説家で、作品のために女性を抱いていたが……。
見どころポイント
小説家として葛藤を抱える京介が鈴と出会ったことにより、どのように変化していくのか。
それが本作で注目したいポイントです。
わかりやすく解説していきますね♪
京介という男の、作家としてのエゴ
佐々木京介こと官能小説家の九鬼令苑は、「モデル並の美形で女を切らしたことがなく、セックスに関しては百戦錬磨と業界では有名」という人物。
官能ジャンルとしては異例の売れっ子で、彼の小説は映像化もされています。
つまり、成功した官能小説家。
ですが彼自身はかなり挫折感を抱いています。
なぜなら彼は本当は「佐々木京介」という純文学作家だったから。
そうです、鈴が将来編集者になりたいと願うほど憧れた小説家の佐々木京介は、京介と同姓同名の別人ではく、彼自身だったのです!
ですが小説家・佐々木京介の作品は売れず、評価されず、「俺の小説はこの世に必要とされてない」と思い詰めるまでに。しかし「それでも書きたい」という思いは消えず、ペンネームを変えて官能小説家として書き続けているんです。
彼が官能小説を書くためには「女性を抱く」必要があり、作品の数だけ女性と寝てきました。
しかし、あるときからどうしても女性を抱けなくなり、休筆を余儀なくされます。
そんな作家として崖っぷちのときに出会ったのが鈴だったのです。
鈴にはなぜか欲情した京介。そこで彼は官能小説家として書き続けるために、鈴を手に入れようとし──。
ここまで読んでおわかりかと思いますが、京介がけっこうヒドい男!(笑)
自分の執筆のために鈴を利用するんですよね、しかも鈴にはそれを隠して。
でも、これほどまでに小説を書き続けることに執着する京介こそが、本作の魅力です。彼がどれほどの思いで小説を生み出しているか、どれほど純粋に小説を書くことを愛しているか、そしてそんなに愛している小説で認められないことがどれほどつらいかがしっかり描かれているので、一概に彼を責められません。
そうやって、最初は恋愛ではなく、作家としてのエゴイズムから鈴に執着する京介。
それが鈴の一途な気持ちに触れることにより、少しずつ変化していくのです。
第1話で「京介、ヒドいな!」と思った方も、ぜひその先を読んでみてください。違う感想が出てくるかもしれません。
闇属性の京介と光属性の鈴というカップリング
前述の通り、京介は歪なところがあるキャラクター。
傷つきやすく繊細。本当にやりたいことで認められずに葛藤して苦しんでいます。
鈴に対する態度にもムラがあるんです。
彼のことを理解したいと九鬼令苑の小説を読もうとする鈴を「俺のことなんて知ろうとしなくていい」と拒絶したり、かと思えばほかの男性を頼ろうとした鈴に対して「俺以外の男に縋り付くなんて許さない」と言ったり、服をほとんど持っていない鈴に服を大量に買ってあげたり。
一読したとき「こういう男の人に沼落ちしたら抜け出せなそう」という感想を抱きました(笑)。情緒をめちゃくちゃにしてくるタイプのキャラクターです。
そんな京介が闇属性だとしたら、鈴は光属性のキャラクター。京介を支え、彼の苦しみを理解しようとします。
圧倒的な善性で京介の言動を許す鈴。そういう彼女だからこそ京介は救われ、ふたりは関係を見直していくことになります。
光属性のキャラが闇属性を救う展開が好きな方、ぜひ本作をチェックしてみてください!
密度のある絵の魅力
本作は、聖ゆうか先生の絵も魅力的!
キャラクターの表情や身体、漫画の背景など密度が高く、世界観に没入できます。
特に素晴らしいのは毛の表現!
「京介のまつげがバッサバサでイケメンすぎる……」と何度思ったことでしょう。
髪の毛やまつげなどが丁寧に描き込まれており、京介の美形さや鈴のかわいさに説得力があります。
実は2017年に連載が始まった『君を抱くのは仕事だから 雇い主は変態小説家』は、聖ゆうか先生の体調の悪化で2019年から2020年にかけて休載、2021年に連載再開した作品です。それもあってか途中から少し絵柄が変わっています。
でも休載前も連載再開後も、どちらも絵柄のクオリティが高い!
柔らかそうな髪の毛の表現なども全編を通して楽しめます。
まとめ
アクの強い“変態小説家”と、彼を癒す一途な女性を描いた『君を抱くのは仕事だから 雇い主は変態小説家』。
今回ご紹介した内容は、単行本1巻のもの。本作は2023年に第26話で完結しており、単行本の最終5巻も配信を控えています。
紆余曲折ありまくる彼らの恋路がどのように決着するかは、ぜひご自身の目で見届けてくださいね♪
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