マンガやライトノベルの主人公の年齢や属性は、対象読者と近いことが多いものです。
例えばTLのヒロインが社会人だったり、週刊少年ジャンプ作品の主人公が少年だったり。共感してもらうため、読者と似ている親しみやすい要素を入れるんでしょうね。
しかし近年、“子供向け”や“児童向け”ではない子供が主人公の作品が増えてきました。
『無職転生 〜異世界行ったら本気だす』や『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』など、アニメ化されている人気作品もあります。
多くの場合、「外見は子供だけど異世界からの転生者だから中身は大人」だったりするのですが、今回ご紹介する『馬小屋暮らしのご令嬢は案外領主に向いている?』(原作:石動なつめ 漫画:藪犬小夏)の主人公は、転生者ではない、本当に10歳の女の子!
それでも大人が読んでも面白い、のびやかなファンタジーなのです!
その魅力をご紹介していきます。
あらすじ
レイヴン伯爵家の娘として生まれたアナスタシア・レイヴン。
第二夫人であった母が亡くなったことをきっかけに父は屋敷に戻らなくなり、領主不在のレイヴン領は混迷を極めるように。
父の第一夫人から疎まれていたアナスタシアは、教育もされず、使用人もつけられず、馬小屋に放り込まれてしまいました。
しかし、アナスタシアは図太く風変わりなご令嬢。
馬たちに愛され、大好きな発明を自由に行い、馬小屋での生活を満喫していたのです!
彼女が10歳になると、悪政を敷いていた伯爵家の人々は「領主の資格なし」と判断されて捕縛されますが、不遇な環境におかれていたアナスタシアだけは不問に。
領地に訪れていた監査官ローランドに才能を見出され、馬から教わったという知識と常識離れの発明品で領地に革命を巻き起こしていきます。
見どころポイント
本作は発明と馬を愛するご令嬢の成長の物語!
ということで、見どころはもちろん「発明」と「馬」です(笑)
天才発明少女・アナスタシア
馬小屋に1人追いやられても、大好きな発明が自由にできるという理由からご機嫌だったアナスタシア。
彼女には魔法でモノを作り出す天賦の才がありました。
「馬のことはよくわからん」と言う男性がいれば、身につけると馬の言葉がわかるブレスレットをプレゼント。
「何かを作ってるところを見せてほしい」という要望があれば、一瞬で毒味用のスプーンを作成。
毒が蔓延する場所では、大風を起こせる扇を用意して危機を脱しました。
ほかにも「短い遠眼鏡」や「色で温度がわかる石の花」など、彼女の発明品は多種多様!
でも教育を受けていない馬小屋暮らしの少女が、なぜ色々なものを発明できるのでしょう?
それは、馬に教わったから(笑)
馬に「うちの子」と呼ばれるほど愛されているアナスタシアは、さまざまなことを馬に教わりながら10歳まで成長しました。
亡くなってしまった母譲りの魔法の才能と、馬からの知識。それを駆使して、自分の楽しみのためにさまざまなモノを発明してきたのです。
そんな“人と関わらない孤高の天才”を地でいく彼女に転機が訪れるのが第3話。
家族から放置されてきたアナスタシアは、誰かに期待されたことがありませんでした。
しかしアナスタシアの才能を認めている監査官のローランドは、領地の問題に対処する際、彼女に「期待している」と告げたのです。その言葉で彼女は「私も誰かと繋がれる」と喜び、みんなの役に立ちたいと願います。
そうして作った発明品で、また誰かに認められていく。
孤独だった少女が、一人では得られない喜びを知る……そんな健気でいじらしいエピソード、ぜひ読んでみてください。
エピソードの鍵を握るのは馬!
アナスタシアを愛してくれたのは馬、さまざまな知識を与えてくれたのも馬、暮らしていたのも馬小屋……と馬の存在感が非常に強い本作。
実は登場するのは普通の馬だけではないんです!
毒が蔓延してしまった領地で彼女が出会ったのはユニコーン。
そう、馬です!
アナスタシアはユニコーンの協力を得て、毒をまいた犯人を追い詰めていきます。
さらに次のエピソードのキーになるのはコシュタ・バワー。
ユニコーンよりマイナーですが、首無し騎士・デュラハンが騎乗する首無しの馬のこと。
つまり、またまた馬です!
このように本作は馬まみれ。
馬をキーにして物語が展開していくのです。
次はどんな馬が登場するんだ……? というちょっと変わった期待も、本作ならではと言えるでしょう。
アナスタシアを見守る大人たち
家族には恵まれなかったアナスタシアですが、レイヴン伯爵家の領地を差し押さえるべくやってきた監査官ローランドとの出会いで運命が変わっていきます。
ローランドは「馬小屋で暮らしていた伯爵令嬢」という奇妙な存在に戸惑ったものの、彼女の才能を見抜き、身柄を預かることにします。レイヴン伯爵領の未来を託すために、自分のそばで学ばせる作戦です。
彼の素晴らしいところは、アナスタシアをまだ幼い子供として守りつつも、1人の人間として尊重するところ。多くの人は荒唐無稽に感じるであろう彼女の意見に耳を傾けたり、信頼を寄せていることを言葉で伝えたりといったことを自然に行うのです。
また、彼女を取り巻く大人はローランドだけではありません。彼と行動をともにする騎士のシズやライヤーも、アナスタシアを1人の人間として扱います。
家族から疎まれ、領民からも嫌われていると思っていたアナスタシアは、ローランドたちとともに過ごすことで少しずつ考えを変え、のびやかに成長していくのです。
アナスタシアは自分の置かれた状況を冷静に理解している聡明な少女。不遇だった天才少女が周りの人々に恵まれ、ぐんぐん才能を伸ばす様子が描かれているのが本作のたまらない魅力です。
まとめ
魔法で作られる発明アイテム、種類が増えていく馬、そして周囲に認められていく少女。
そんな骨太ファンタジーが展開されている『馬小屋暮らしのご令嬢は案外領主に向いている?』。
単行本は現在2巻まで発売されています。さらに3巻の配信日も決定! 2月23日にBookLiveで先行配信、3月22日から全電子書店で配信されます。
成長物語が好きな人は楽しめると思いますので、ぜひチェックしてみてくださいね♪
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