妖狐に猫又、鬼に天狗……妖怪たちの世界って、思わず引き込まれてしまいますよね。
日本の文化ならではのあやかしたちが登場する物語は、今や人気ジャンルのひとつです。
今回ご紹介するのは「小説家になろう」で人気を博した、忍丸先生原作の異世界ファンタジーを目玉焼き先生がコミカライズした『わが家は幽世の貸本屋さん』。
人間の少女があやかしたちと織りなす、まるで絵巻物のような幽玄の物語。
さあ、さっそくストーリーをご紹介していきましょう!
あらすじ
いつものようにアルバイトを終えた村本夏織(むらもと かおり)は、夕食の買い物を済ませて通勤電車に揺られ、帰途につきます。
住宅街の路地にある祠(ほこら)の前でしゃがみ「帰りゃんせ」と唱えると、一瞬で周囲は幽世(かくりよ)の世界に。
人間たちが生活する現し世(うつしよ)と、あやかしたちが暮らす幽世。
夏織は境界が定かでないこのふたつの世界を行き来しながら生活しています。
人間である彼女は、3歳の時に幽世に迷い込んでしまったところを東雲(しののめ)に保護され、以来、彼が営む幽世の貸本屋で一緒に暮らしています。
夏織と東雲と猫のにゃあさんの3人(?)暮らしの日々ですが、商売っ気の無い東雲のせいで、夏織は現し世で出稼ぎのアルバイトをして生活を成り立たせているのでした。
ある日の夕食時、外が騒がしくなったので様子をうかがうと、光る蝶の群れが。
この蝶は幻光蝶(げんこうちょう)といって人間に集まる性質があり、蝶が集まっている場所に向かうと、頭から血を流して倒れている白髪の青年の姿が――。
現し世に戻し、救急車を呼ぼうとした夏織と東雲でしたが、「おいてかないで……」と言って気を失った青年を途中で投げ出すことができず、仕方なく家に連れ帰ることにします。
幸い傷も浅く、手当てを施されて目を覚ましたその青年の名は、白井水明(しらい すいめい)。
実は彼、あやかしたちにとっては敵とも言える祓い屋(はらいや)でした。
とあるあやかしを探して幽世に来たという彼は、その目的のため、夏織たちの家に居候することに!?
さあ、奇妙な同居生活がはじまります──!
見どころポイント
それでは本作の見どころポイントを見ていきましょう!
ポイント1. 多様多彩なあやかしたち
幽世には魅力的なあやかしたちが数多く登場します。
まずは夏織の育ての親・東雲さん。
幽世で唯一の貸本屋を営む東雲さんはなにやら執筆活動も行っている様子。
ご飯を食べることも忘れて執筆に没頭する、ちょっとくたびれた中年オヤジの色気を感じるキャラクターです!
夏織を育てたり、お金がなさそうなあやかしにはタダで本を貸してあげたりと、口は悪くてもお人好し……もとい、“あやかし好し(!?)”なことが伝わってきます。
お次のあやかしはオッドアイの黒猫・にゃあさん。
猫とは言っても3本のしっぽを見て察せるように、にゃあさんは猫又です。
人語を話し、いざという時には巨大化!
飼い猫や相棒のような存在だけでなく、時として姉のように、叔母のように夏織を支えてくれる存在です♪
お次はカラス天狗の双子、金目(きんめ)と銀目(ぎんめ)。
おだやかでお兄ちゃん気質の金目とやんちゃで弟気質な銀目。銀目は「夏織ラブ♡」で少し喧嘩っ早いですが、素直で憎めない天真爛漫さが魅力。
人懐っこいイケメンツインズです♡
お次がナナシ。
名前の通り「名無し」のためみんなからそう呼ばれる彼は、美しい容姿とムキムキの肉体美を併せ持つ、乙女の心を持つおっさん! 東雲さんとじゃれ合う間柄です。
薬屋を営む彼は、物腰が柔らかくミステリアスな雰囲気もあり、対面したら誰もがドギマギしてしまいそうな魅力の持ち主。
色気と包容力たっぷりで傷の手当てをしてくれる彼は、昔の漫画によく登場した学校中の生徒が憧れる「保健室の先生」的キャラです♡
そしてラストを飾るのがぬらりひょんです。
ぬらりひょんといえば、古くからさまざまな妖怪絵巻に登場するポピュラーな妖怪ですが、多くの書物でのイメージは袈裟や着物を着たハゲ頭のおじいちゃん姿。
ところがどうですか? 本作のぬらりひょんはイケメン!
そのうえ本を読み聞かせてくれる! きっと、いや絶対に美ボイスに決まってます!
ぬらりひょんはクラゲやタコが妖怪化したものという説がありますが、本作のぬらりひょんには頭上にクラゲが浮いていて、かわいい♡
原作者の忍丸先生も目玉焼き先生のコミカライズでのお気に入りはぬらりひょんということで、原作での出番が増えたのだとか。
ぜひ漫画でそのイケメンっぷりを拝んでください♡
人間を襲うあやかしもいる一方、見た目は怖くても優しかったり、愛嬌があったりするあやかしもたくさん!
今後もどんなあやかしが登場するのか、楽しみです!
ポイント2. 祓い屋・水明のポテンシャル
イケメン揃いの本作ですが、祓い屋の水明も例外ではありません!
彼は代々祓い屋家業を営む名家の跡取り。
居候の賃料としてポンとひと月200万円を払う財力と気前の良さ!
しかも彼はまだ17歳なんです……!
“おぼっちゃま”なだけあって、最初は「俺は最上級米を使って炊いた粥しか食べない」と夏織が炊いたお粥を突き返すなど、態度の大きさが目についた彼。
しかし、器の大きさも兼ね備えているようです。
金目に攻撃された理由が誤解と分かったとき、水明は金目に謝れと言って緊迫した空気が流れますが、金目が確かにそうかもと「悪ィ!」と謝った途端に「…わかったならいい」と承諾。
ネチネチと言わない潔さが素敵です♡
水明はあまり余計なことを語らないタイプですが、時には相手を気遣い、必要なことはきちんと口にします。
人の心の機微を読み取るのも得意。
キミ、ホントに17歳……?と思わず問いただしたくなります(笑)。
物語の序盤で水明が「今は自由に力を使えない」と言っていること、そして「帰りたい家など俺にはない」と言っていることからも、かなりワケアリな様子。
幽世に来たのは「とあるあやかし」を探すためだと言っているので、水明が「力を使えない」ことと「帰りたくない家となってしまった」理由が、そのあやかしと深く関係していそうです。
また、どうやら水明は早くも夏織に惹かれてきた様子……♡
夏織のことを「不思議な奴だ」と思いながらも気になってしかたがないなんて、それはもう「LOVE」ですよ!!
夏織の態度からも、水明と似たような想いを感じ取れますので、これからの進展が見逃せません♡
ポイント3. 稀人(まれびと)・夏織の魅力
ヒロイン夏織は、3歳で幽世に迷い込んだ人間──いわゆる「稀人」です。
以来あやかしである東雲さんに育てられ、今では「稀人の嬢ちゃん」などと呼ばれ、すっかり幽世で馴染んで生活しています。
小さなころからあやかしたちに慣れ親しんできたせいか、見た目よりも内面を重視する心優しい少女に成長しました。
彼女の願いはこれからも貸本屋をしながら幽世で楽しく暮らすこと。
大事な人や物がある幽世は、もはや夏織にとって人間である自分が暮らすべき現し世とは比べ物にならないくらい大切な存在に。
人間界での彼女の様子がほとんど描かれていないことと、幽世での毎日を生き生きと過ごしている様子からも彼女が幽世が大好きなことがよく伝わってきます。
水明は夏織のことを「夏織は不思議な奴だ まるで子どもみたいだと思ったら 時々大人びた顔をする」と言っていますが、子どもみたいな面は幽世で良くも悪くも純粋なあやかしたちと触れているせいにも思えますし、大人びた面は幼いころに両親と別れたことと、幽世の世界ではむしろ夏織の方が異形かもしれないマイノリティとして育ったという理由からかもしれません。
また、夏織と親しいあやかしたちが水明に気安いのは、「もともとの素質もあるだろうが夏織の影響も少なくないだろう」と水明は考察しています。
ナイス考察! そうです! 夏織には対峙する相手が気を許してしまう魅力があるのです。
彼女は人間とあやかしが仲良くなって欲しいと思っていますから、「あやかしとは祓うもの」と思って生きて来た水明に意識改革が起きたように、彼女が人間とあやかしの橋渡し的存在になりうるのではないでしょうか。
原作ノベルもチェック!
『わが家は幽世の貸本屋さん』のノベル版は、現在短編集を含むシリーズ7作が発売中(完結済み)!
「小説家になろう」で旧タイトル『あやかし世界の貸本屋さん』として連載が始まった本作は見る間にファンを虜にし、シリーズ累計7万部を突破した人気作品です。
装画、キャラクターデザインは人気イラストレーターの六七質先生が担当し、物語に幻想的で美しい世界観を添えています!
また、マイクロマガジン社が展開するYouTube公式チャンネルにて、短編集の告知動画が配信されているので、こちらもぜひご確認を♪
六七質先生のイラストに幽玄なBGMが合わさることで、本作の世界観を存分に堪能できる動画となっています!
まとめ
いかがでしたか?
この後、水明の秘密などが徐々に明かされていくであろう『わが家は幽世の貸本屋さん』は、漫画全4巻で完結しています。(ノベル版ではその続きも読めちゃいます◎)
稀人に集まる習性がある幻光蝶や、夏の間だけ明るい森など、漫画の端々に散りばめられている幻想的な幽世の魅力を、ぜひ堪能してみてください♪