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『みにくい遊郭の子』野生児が花魁に!? 少女の成長と恋を描く和風異世界ロマンス

少女漫画レビュー
『みにくい遊郭の子』
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸHIFUMI SHOBO

童話『みにくいアヒルの子』を覚えていますか?

大きなみにくいアヒルの子が周囲からのいじめに耐えかねて巣を飛び出し、過酷な冬を乗り切ると、美しい白鳥に成長。仲間の白鳥からも歓迎され、自分の居場所を見つけることができた……というアンデルセンの童話です。今でも世界中の人々に読み継がれているのは、きっとこの物語が持つ「疎外感」「孤独」「苦難」からの「変化と成長」、そして自分の本当の居場所を見つけるという普遍的なテーマが愛されているからでしょう。

今回ご紹介するマンガは、狩谷成先生の描く『みにくい遊郭の子』

居場所を失った天涯孤独の女子高生が、不思議な異世界の遊郭で成長することにより、魅力を開花させていくお話です。どこか『みにくいアヒルの子』の持つ普遍的なテーマを彷彿とさせます。

孤独な少女の成長物語、そしてイケメンとのドキドキな恋愛という要素も併せ持つ本作の魅力をお伝えしていきますね♪

あらすじ

主人公は、女子高生のエソラ

主人公のエソラ。現代の女子高生だったが、気がつくと異世界の遊郭に売られていた。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

彼女は居場所を失い、気がつくと不思議な花街にいました。

人買いに売られ、たどり着いたのは遊郭の相模屋。

そこの主人・相模(さがみ)から「花魁になれ 自分で居場所を作れ」「お前なら遊郭で一番になれる」と言われ……。

遊郭・相模屋の楼主である相模。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

居場所を求める少女の成長と恋が描かれていきます。

見どころポイント

『みにくい遊郭の子』の見どころポイントは、主人公のエソラとその恋のお相手(?)になるかもしれない相模! その魅力と、物語の舞台となる異世界をご紹介します。

野生児から花魁に!? どんどん魅力が開花していく主人公エソラ

第1話で本作の主人公・エソラの境遇を見た読者は、その悲惨さにびっくりしてしまうのではないでしょうか。

保護者と思しき人たちからは「私達家族には二度と関わらないで」と絶縁され、「次の家」だと指定されたところに行けばまっさらな土地。

家も食べものもなく、空腹に耐えかねて神社のお供え物を盗み食いし、「こんな世界に生まれなければきっともっとマシな人生送ってたんだろうな」と悲観。

気がつくと、不思議な世界で遊郭の主人・相模に買われていました。

しかしエソラは特に驚くことはなく相模のことを「次の飼い主」と言い、食べものと寝る場所さえあれば「勝手に人前に出たりしないし」「家族だと思って甘えたりしない」と悲しい言葉を吐きます。これまでどのような扱いをされてきたのかが察せられますね。

相模に買われたばかりのエソラ。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

そんな彼女は、遊郭で花魁になり自分の居場所を作るように相模に言われます。

客やほかの遊女との交流を経て、「体を売らずにありがとうと言われる」ことを目標とするエソラ。言葉遣いがガサツで教養のない野生児のような彼女は、自分を磨いていきます。

相模屋の遊女と衝突するエソラ。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

数々のピンチにもエソラはめげずに立ち向かい、自分の才覚や周囲の協力もあって成長!

人の目を引く天性の素質、舞の才能、そして持ち前の思い切りの良さで切り抜けていく姿は読んでいて気持ちがいいものです。

特に、第2巻で客から「着物を脱ぎなさい」と言われたときに腹を決めて冷静に対処するシーンや、第3巻の「(内儀に)なれるの?」のシーンなどは、エソラの美しさと成長が垣間見えるので見どころです!

ハッとするような美しさと覚悟を見せるようになった彼女の、今後に要注目です♪

遊郭の謎多き主人・相模

相模はエソラを買った男。遊郭・相模屋の楼主でもあります。

特徴的なのはその顔!

なんと顔全体が面布で覆われてほとんど見えないのに……美形であることがわかるんです(笑)。

相模の特徴はやはり面布。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

面布にはひとつだけ目がついており、どこを見ているのかは察することができます。その面布の目がエソラを追う様子に胸がキュンとする読者も多いのではないでしょうか。

相模は彼女に厳しく当たることもありつつ、ピンチには絶対駆けつけるというまさにヒーロー。

さらに客を魅了するエソラの舞踊を「常連の前だけにしろ」と禁じたり(評判になったほうが遊郭にとって有利なのに!)、ほかの男性と一緒に歩いていたら「あまり知らない男についていくな」と言ったり。ただの心配? それともやきもち? 楼主と遊女という関係を超えてなんらかの感情を抱いているのでは……? と妄想がはかどります。

どんなときもエソラを助けてくれる相模。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

また、相模は「ルリ」という女性が産んだ子供を探している様子。エソラには子供の特徴である「肩のアザ」はないのですが、どこかルリを思わせる表情をすることも。なぜ相模はルリの子供を探しているのか、そして相模とルリの関係は? エソラはルリの子供なの? 疑問が尽きず、それもページをめくる原動力に繋がっています!

“異世界転生あるある”も味わえる? 『みにくい遊郭の子』の世界

本作の舞台となる異世界は、どこか昔の日本を思わせる場所です。

エソラは保護者に捨てられ、神社で動けなくなっていたところまでは覚えていますが、どうやってこの場所に来たのかは不明。

字が上下や左右逆さまに書かれていたり、エソラのことを「ニンゲン」と呼んだりと、世界観自体に摩訶不思議な魅力があります。

文字が反転している。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

例えば「七夕」と言えば旧暦7月7日の夜のことで、笹竹に願い事を書いた短冊を飾りつける行事を指しますが、エソラが舞い込んだ異世界では「七夕」は行灯(あんどん)にヒラヒラした布がついたような生き物です。華やかなところが好きで、ある時期になるとどこからともなくやってくると言われています。

異世界の七夕。
引用元:『みにくい遊郭の子』
Ⓒ狩谷 成/COMICSMART INC. ⒸGANMA!

エソラは「七夕」という名前が共通していることから、生き物の七夕がやってくる時期に短冊に願い事を書いて笹に飾ることを思いつきます。それが遊女たちの間で広まって賑わうという手柄を立てることに。「知っていることをやっただけなのに話題に!」という、異世界転生あるあるも味わえる作品なんです。

昔の日本に似ているようで少し違う世界で、その常識にとらわれない異分子のエソラがどんな騒動を巻き起こすのか。この点も見どころのひとつです!

まとめ

『みにくい遊郭の子』はマンガ配信サービスのGANMA!で連載されており、コミックスは6巻まで発売中です。

不思議な世界、楼主との恋、少女の成長、出生の謎など、魅力的な要素がたくさん詰まった本作。引き込まれるマンガが読みたい人は、ぜひチェックしてみてくださいね♪

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ティーンズラブ小説・マンガ、海外ロマンス作品など大人のラブストーリーを読み漁っています。自分のブログでも書評・レビューを公開中。

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