「家族」とはなんなのか?
生活していく中で、一度は疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
「家族」という定義はあるけれど、「家族」がいるからといって、幸せとは限りません。
では幸せとは……?
そんなことを考えさせてくれるのが今回ご紹介する漫画『ハロー・マイ・ホーム』(空翔俊介)です。
あらすじ
主人公は柏木たまを(かしわぎ たまを)、27歳。漫画の編集者をしています。
彼女は人と話すのも、笑顔も苦手。
子どものころに両親を亡くし、親戚をたらい回しにされ、ひどい言葉を投げかけられてから、うまくコミュニケーションを取ることができなくなってしまったのです。
運よく優しい柏木夫婦に迎えられて以来、少しずつ元気を取り戻していったたまをでしたが、家を出て就職してからも変わらず人とうまく話すことができません。
そんなある日、彼女はひとりの少年と出会います。
彼の名前は橘海(たちばな うみ)。
両親を亡くし心を閉ざした海くんに昔の自分を重ねたたまをは、彼を引き取ることを決意します。
ふたりの同居生活の行方はいかに……!?
物語のポイント
影のある少年と、しゃべることが苦手なヒロイン――。
同じような境遇のふたりが出会い、新しい生活が始まります。
ふたりの未来に「幸せ」はあるのでしょうか……?
思わずウルっとしてしまうエピソードもある本作のポイントを、話の流れに沿ってご紹介します!
似た境遇のふたりの出会い
笑顔も人と話すのも苦手なヒロインのたまをですが、子どものころは明るく、父親と同じ漫画家になることを夢見る女の子でした。
しかし、両親が他界――。
引き取られた親戚、鈴木のおばさんからは「いつまでも暗いわね!!」「もう少し愛想よくとかできないの⁉」と、心ない言葉を投げかけられます。
心の傷が癒えない中、育ててもらっていることに対し精一杯の笑顔で感謝を伝えると「何その気持ち悪い笑顔…」と言われる始末……。
彼女の境遇を考えると、人とのコミュニケーションが苦手になってしまうのも納得です。
そんなたまをに手を差し伸べたのが、柏木のおじさんとおばさんでした。
優しいふたりの元で生活していくうちに、前向きになり、前向きになり、再度漫画家を目指そうと思うまでになったたまを。
柏木夫妻との出会いが、いかに彼女を変えたかがわかります。
残念ながら漫画家としては芽が出ませんでしたが、両親との繋がりである「漫画」に携わる仕事がしたいと強く想う彼女は、漫画の編集者として働くことに。
とはいえ相変わらず話すことが苦手なため、作家さんたちと上手くいかず、5回目の担当変更を言い渡されます。
そんなときに出会ったのが、両親を亡くし、たまを同様鈴木のおばさんに引き取られていた海くんでした。
おばさんは「うちじゃ面倒見れないし お金もかかるし」と彼のことを押し付けるために、柏木夫妻の元にやってきたのです。
さらに、暗く反応のない海くんに対し、「よくもまあここまで暗い顔できるものね…」と心ない言葉を浴びせます。
そしてそんな様子を見たたまをは――!?
いつの間にか手を差し伸べ、彼を連れて走っていました。
海くんを昔の自分と重ね、見過ごせなかったのでしょう。
咄嗟に柏木夫妻の真似をしていたのです。
彼を家に連れてきたたまをは、精一杯の勇気を振り絞ってコミュニケーションを取ろうとします。
何ができるかわからないけれど、心を閉ざしている彼を変えるために、そして自分を変えるために行動したヒロイン……素敵ですよね!
果たして海くんは、たまをに心を開いてくれるのでしょうか?
簡単には癒えない心の傷
海くんと一緒に暮らすことを決めたたまをですが、急な出来事だったため当然彼を迎え入れる準備などできていません。
彼の持ち物はランドセル1個だけ……ひとまず生活必需品をそろえるために、彼を買い物に誘います。
まずは服から!ということで、さまざまな洋服を提案してみますが、どれに対しても無反応。
思い切って好きな服を聞いてみることに。
すると「お父さんとお母さんに買ってもらったから」と着ている服を示す海くん……。
「もっと考えてあげればよかったな…わたしも同じ時――あったのに…」と心苦しくなるたまをでしたが、彼女はあきらめません! 一生懸命歩き回って、彼の気に入る服を探します!
そんなたまをに手を引かれながらついて行く海くんの様子がかわいらしいので、ぜひご注目を♪
最終的に服を買ってもらい、嬉しそうな素振りを見せる海くん。
たまをがどんな服を買ったのかはぜひ、漫画でご確認ください◎
買い物を済ませ帰宅したふたりは、夕食を食べることに。
たまをがありあわせの物で作った夕食を「あったかい」と言って食べる海くんの様子に、少しずつ心を開いてくれているような予感……?
しかし彼が心に負った傷は深く、そう簡単に癒えるものではありません。
眠りながら涙を流し、両親を呼ぶ場面も……。
小学4年生で親を亡くして、それは淋しいですよね。恋しいですよね……。
そんな彼を見て「大丈夫だよ…私がそばにいるから…」と伝えるたまを。
なんて心揺さぶられる作品なのでしょう……!!
ほっこりとしたシーンと、胸が締め付けられるシーンが交互に出てくる、エモーショナルな作品となっています。
ふたりを支える(!?)サブキャラたち
人とうまく話せないたまをに、暗い海くん――配慮の無い言葉をかけられることがしばしばあるふたりですが、一方で彼女たちを支えてくれる存在もいます。
たまをには彼女を救ってくれた柏木夫妻が、海くんには彼のことを守ろうとしてくれるクラスメイトや寄り添ってくれる先生が。
さらに、1巻の中盤からはたまをのお隣さん、五十嵐親子も登場します!
海くんのクラスメイトである五十嵐空(いがらし そら)は、最初海くんのことをいじめていました。
でもそれには理由があって……!?
海くんと空の関係が見られるエピソードとなっているので、ぜひ読んでみてください♪
さらに空の母親は無表情な海くんを見て「虐待されているのでは?」という疑惑を持ち、たまをに接近!?
さて、このお隣さんとの関係は一体どうなるのでしょうか?
ふたりの周りに優しい人が増え、優しさが連鎖していくことを祈るばかりです……!!
まとめ
ひとちぼっちだった海くんがたまをと出会って、少しずつ彼の世界は広がっていきます。
1巻の表紙では幸せそうに満面の笑みを見せている海くん……彼のこんな笑顔が見られる日はやってくるのでしょうか?
2024年3月現在、本作は2巻まで発売中!
2巻では無表情だった海くんが徐々に感情を見せてくれるように!? たまをの漫画編集者としての成長も見られますよ!
ぜひ続けて読んでみてくださいね♪
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