不器用でちょっとズレてるけど、目標に向かって努力できる男子高校生。
凛としたまっすぐな生き方がカッコいい女子高校生。
そんな幼なじみふたりの青春と、ゆっくりとした恋の進展を描いた漫画『なつめとなつめ』(空翔俊介)をご紹介します♪
猫を助けたり、テスト勉強をしたり、クラスメイトとすれ違ってしまったり。そんな些細な、でも高校生にとっては大切な日常を丁寧で優しい感情表現で描く本作。温かい気持ちになりたいときにピッタリの一作です!
あらすじ
高校2年生の男子・不知火棗(しらぬい なつめ)の憧れの人は、幼なじみの女子・水無月夏目(みなづき なつめ)。
棗にとって夏目は、ピンチになると駆けつけてくれて間違えたら道を示してくれる、ヒーローのような存在です。
そんな凛としてカッコいい彼女に追いつきたい。自分も彼女のヒーローになりたい。
その願いを胸に、勉強も学校行事もお弁当作りも、そして人助けもがんばる棗。
悪者のような怖い顔と不器用な性格のせいで誤解されがちな彼ですが、目標に向かって日々努力を欠かしません。そしてそんな棗は、夏目にとってもまたヒーローのようで……。
お互いを尊敬し合う幼なじみの、恋と青春が描かれていきます。
登場人物
不知火棗(しらぬい なつめ):心根は優しいのに、顔のせいで怖がられている男子高校生。幼なじみである夏目に憧れ、彼女のヒーローになるために毎日がんばっている。
水無月夏目(みなづき なつめ):親切で気遣いができ、みんなから憧れられている女子高校生。幼なじみの棗をいつも気にかけている。
ここに注目!
本作で描かれているのは、うまくいかないことも傷つくこともありつつ、目標に向かってまっすぐ努力する高校生の青春。
そう、“尊い”エピソードの宝庫なんです。
ここでは、本作で注目してほしい“尊いポイント”を一緒にチェックしていきましょう!
尊いポイント1 空回りすることも多々! でも不器用な男子が全方位で努力!
主人公の棗は、正直に言ってかなり不器用。そしてちょっと天然です。
「ヒーローになるにはお弁当くらい作れなくては」という決意のもとお弁当作りに挑戦するのですが、毎回中身は塩おにぎりと大量のたくあん(見かねた夏目がおかずを分けてくれる)。
スマートに人助けをしている夏目に感化され道に迷っている人に声をかけるも、顔が怖いため逃げられる(そして逃げられた理由には気づかない)。
こういう空回りエピソードが多いのですが、お弁当を自分で作るなんてえらい! 困っている人を助けようとする姿勢がもう100点! と思わず応援したくなるタイプのキャラクターです。
特にチェックしてほしいのは、1巻に収録された猫を助けるエピソード。
棗は、木に登って降りられなくなってしまった猫を助けてほしいと小学生から懇願されます。
木の高さにビビりながらも、「(この状況でも)夏目なら助ける」と憧れのヒーローに近づくため、そして泣いてる小学生を笑顔にするため、自ら木に登っていくのです。
落ちそうになりながらもなんとか無事着地し、夏目から褒められることを期待した棗。でもその危険な行為に、彼女は心配しすぎて涙ぐんでしまいます。落ち込む棗ですが、それでもめげずにヒーローになる努力を続けることを誓うのです。そして、そんな彼を見ていた小学生たちからは「ヒーローみたい」と言われ……。
このときは「夏目のヒーロー」にはなれませんでしたが、誰かのヒーローにはなれた。不器用でもうまくいかなくても行動する姿は尊い!と思えるエピソードです(でも夏目の言う通り、危ないことはやめたほうがいいですね!)。
尊いポイント2 顔は怖いけど、常に口角を上げてスマイル!
棗のビジュアルの特徴はキュッと上がった口角!
目つきが鋭くいつも眉間に皺が寄っている彼は、いわゆるコワモテ。でも常に口角を上げ、明るい笑顔を作っているんです。
ただ彼は極端なくらい口角が上がっているため、逆にちょっと怖い(笑)。
なので結局「怖い顔」という印象を拭いきれないのですが、ずっと笑顔でいるというのはなかなかできることではありません。
もともと、彼の口角は下がっていました。
転機となったエピソードは第4話に描かれています。
高校1年生の頃の棗は、人を助けるためならば喧嘩も厭わず、暴力沙汰になることが日常茶飯事。そんな彼を心配した夏目が大号泣しながら「笑う棗の横でわたしも笑いたい」と言ったことから、彼は笑顔を心がけるように。
夏目ですら最初は「それは…笑顔なんだよな?」と違和感のある様子でしたが、棗は「ヒーロースマイルです」と断言。今の口角を上げた表情ができあがりました。
「笑っていてほしい」という夏目の真心が届き、笑顔になった棗。それ以来、周囲の人に笑顔になってほしいというだけでなく、彼自身も笑顔でいるよう努力するようになったのです。
笑顔になった理由……尊い!
尊いポイント3 お互いを大切に思い合う幼なじみ! でもそれだけじゃなくて……
棗は夏目のことをヒーローだと思い、自分も彼女のヒーローになりたいと願って努力を続けています。
そして夏目も、棗のことをとっても大切に思っているのです。
がんばり屋で優しくて不器用な彼が傷つかないよう、がんばりすぎないよう、陰になり日向になり見守っています。
「高校生になってもお互いを大切にし合う幼なじみ」というだけですでに尊い! のですが、物語が進むにつれ、ふたりはお互いを異性として意識し合うように。
でもずっとそばにいた大事な存在だからこそ関係の変化を恐れ、気持ちがすれ違って切ない展開になっていきます。
ふたりの関係がどう変わっていくのか。うまくいかない恋模様が本当に尊い作品です。
まとめ
同じ“なつめ”という名前を持つ幼なじみ男女の物語『なつめとなつめ』。
棗が夏目のヒーローになるまでを描く本作は、現在8巻まで刊行されています。
このレビューでは棗と夏目を軸に魅力をお伝えしましたが、ふたりだけではなく周囲のキャラクターの感情を丁寧に追った優しい作品なんです。高校生たちのキラキラ輝く青春を覗き見したいとき、そっとページを開いてみてくださいね♪
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