異形頭たちが生活する世界に突如転移したブラック企業の社畜OLと、彼女を拾った異形頭の恋を描いた『異形頭さんとニンゲンちゃん』。
pixivから生まれ、瞬く間に人気を獲得してSNSを賑わせてる本作ですが、この度書籍化が実現しました!
今回は累計80万ダウンロードを達成した本作の作者、三毛たま先生にインタビューを実施し、作品の裏側と制作のルーツについて語っていただきました。
まずは簡単なあらすじからご紹介します!
あらすじ
人間たちが生活を営む現実世界。社会生活に疲れた社畜OLは、会社帰りにトラックに轢かれそうになり、その瞬間別の世界へと転移していました。
そこは悪役令嬢やお姫様の世界ではなく、異形頭たちの世界。
食べ物や文化、そして交わす言葉もほとんど同じ異形頭たちの世界には、彼女のように転移してくる例を除いて人間が存在しないため、珍しいペットとして扱われているようです。
彼女を拾ったのは、見た目は少し怖いけれどとても優しい異形頭さん。彼は拾った彼女のことを「ニンゲンちゃん(仮)」と呼び、大切に育てることになったのです。
人間界でのトラウマのせいか、喋ることができなくなっていたニンゲンちゃんは、美味しいご飯と暖かい寝場所を与えられ、それは快適に暮らしていました。……ところが一緒に暮らすうちに異形頭さんはニンゲンちゃんに恋心を、ニンゲンちゃんもまた異形頭さんに恋心を持つように。
実は両想いのふたりですが、恋心をめぐって繰り広げられるモダモダな日々。この恋はいつ成就するのでしょうか──!?
三毛たま先生インタビュー
初の漫画体験は高橋留美子先生
──今日はインタビューにお越しいただきありがとうございます。よろしくお願いいたします。
三毛たま先生(以下、三毛) よろしくお願いします。
──先日某バラエティ番組の漫画特集でも先生の作品が紹介されていましたね。『異形頭さんとニンゲンちゃん』がどんどん注目を集めていることを目の当たりにしました。さらに注目を集めることになりそうですね。
三毛 ありがとうございます。そうだと嬉しいですね。私もテレビを観ていてびっくりしました。
──三毛先生が最初に漫画に触れられたのはいつ頃で、どのような漫画でしたか?
三毛 幼稚園のころだったと思います。家族が持っていた高橋留美子先生の『炎トリッパー(ファイヤートリッパー)』が最初に読んだ漫画ですね。
──幼稚園で高橋留美子先生の漫画!? 難しくなかったのでしょうか。
三毛 絵がとても綺麗なことに感動したのをすごく憶えています。ストーリーが難しいながらも、子供なりに楽しんで読むことができました。
──お話をお聞きして、まさにその瞬間が漫画を好きになったきっかけのように感じました。漫画は幼少期から描かれていたのですか?
三毛 絵はずっと描いていましたが、「漫画」というストーリーのあるものを描くようになったのは小学校5年生くらいからですね。絵が上手な友達とテーマを決めて、お互いにアイデアを出し合って、交換日記の要領で漫画を描き合ってリレー形式にストーリーを繋げていくというものでした。すごく楽しかった思い出ですね。
──そうやって漫画に慣れ親しまれたのですね。もうその頃にはプロの漫画家を目指していたのでしょうか?
三毛 そうですね、もう小学生くらいのときには漫画家になりたいと思っていましたが、順風満帆には行きませんでしたね。『花とゆめ』で連載していた高屋奈月先生の『翼を持つ者』が大好きで、その影響で『花とゆめ』に学生のときに数回、社会人になってからも再度作品を送ってみたりしましたが、だんだんと私生活が忙しくなるうちに自然と創作活動が落ち着いてしまいました。
──描かれていたのはどんなジャンルの漫画だったのでしょうか?
三毛 “ザ・少女漫画”という感じでした(笑)。
いくつものタイミングが重なりプロの漫画家になる夢が実現
──今はプロとしてご活躍されていますが、さきほど創作活動が落ち着いてしまったというお話をされていました。再び漫画の世界に戻られてプロとして活動されるきっかけは何だったのでしょうか?
三毛 社会人になってからpixivで少し二次創作をメインに描いていたのですが、そこでお声がけいただいて、 2021年にTL(ティーンズラブ)で商業デビューさせていただいたのがきっかけになりますね。ちょうど育休中だったのですが、コロナ感染症の流行で復職するにはタイミングが悪い時期だったということも重なって、そのままプロの漫画家1本でやっていくことになりました。
──時代や世の中の状況、三毛先生の生活環境など、ちょうどいろいろなタイミングがガッチリと合ったのですね。
三毛 本当にそう思います! ありがたいことにドドドドッとタイミングが重なって、あれよあれよという間に夢を叶える形になりました。
──今回こうして取材をさせていただくことになった『異形頭さんとニンゲンちゃん』はどのようにして生まれたのでしょうか?
三毛 さきほど高屋奈月先生の『フルーツバスケット』や『翼を持つ者』に夢中になったというお話をしましたが、他にもひかわきょうこ先生の『彼方から』という作品も大好きで。主人公の女の子が異世界に行くという“異世界転移モノ”の先駆け的な作品でしたから、自身の作品もその影響をモロに受けているかなと思います。最初にお話しした高橋留美子先生の『炎トリッパー』もタイムスリップモノなのですが、ストーリーが時空を超えて展開する物語がとても好きで、いつか描いてみたいと思っていました。
──たしかに『異形頭さんとニンゲンちゃん』も“異世界転移モノ”ですね。また一方で本作は“異形頭とニンゲンによる異種間ラブストーリー”でもありますね。
三毛 はい。さきほど挙げた高屋奈月先生の『フルーツバスケット』という作品や、ずっと大好きで読み続けている高橋留美子先生の『犬夜叉』も異種間ラブストーリーですし、もともと大好きなジャンルのひとつだったので、自分の性癖を詰め込んだ作品を描きたくて生まれたのがこの『異形頭さんとニンゲンちゃん』です。もともと商業的に配信することは全く考えておらず、創作物として「自分の性癖をちょっと誰かに見て欲しい」と思って久々にpixivにアップしたのがはじまりでした。ナンバーナインさんにお声がけいただいて、色々な媒体で配信していただけるようになりましたが、まさかここまで多くの人に見てもらえるようになるとは思っていなかったですね(笑)。
──ここで担当編集Hさんにも経緯を伺ってよろしいでしょうか?
担当編集H はい。私も元々は読者と言いますか、pixivで流れてきた本作をたまたま読んでいたんです。面白い作品でしたから、ある程度物語が進んだらまとまったものが出るのだろうと勝手に思っていました。ところが話数が溜まってきてもそのまま描き続けていらっしゃったので、お声がけさせていただこうと思い、「この作品をもっと多くの人に届けませんか?」とメールお送りしました。すると本当にすぐに返信をいただいて、今に至ります。
──お仕事でもプライベートでもたくさんの作品を目にすると思いますが、三毛先生にお声がけした決定打は何かあったのでしょうか?
担当編集H 私自身は基本的に男性向け女性向け問わずどんなジャンルも読むタイプなのですが、中でも好きな作品に共通するのはラブコメの要素で、「読んでいてニヤニヤできる作品」というポイントです。『異形頭さんとニンゲンちゃん』はまさに当てはまっていて、刺さりました。
──今回、紙での書籍化となりましたね。
担当編集H そうですね。配信での反響を見て各部署が動いてくれたことで実現しました。
三毛 見本誌が手元に届いたときには本当に感動しました。本当にみなさまのおかげです。ありがとうございます。
──配信の方も80万ダウンロードということで、素晴らしいですね! 本当におめでとうございます。
担当編集H ありがとうございます!
三毛 ありがとうございます!
読者数に影響されることなく自分の”好き”を詰め込む
──配信ですとダウンロード数が分かると思うので、読者が増えていくことを実感されていたと思います。読者が増えていくにつれ、制作の中で気をつけたことや変化させたことなどはありましたか?
三毛 うーん、そうですね。読者が増えることで変えたことは特にありませんね。本当に好き勝手に描かせていただいている感じです。気をつけていることで言えば、異形頭さんは表情がないので、身体全体でカッコよさが出るようにという点は常に意識していました。自分の癖(へき)を詰め込んだために表情による表現を自ら封印してしまったわけですが(笑)、身体はもちろん、手もなるべく画面に映してごつごつしている感じからカッコよさが伝わるようにと頑張っています。また、読者のみなさんにどう楽しんでもらおうと考えたとき、表情がないと画面に変化が起きづらいため、セリフの言い回しやテンポ感には常に気を配っています。
──制作の中で苦労されたことなどは?
三毛 制作自体は本当に楽しく描かせていただいているので苦労は感じませんが、子育てや家の仕事もある中で、時間を捻出するのが一番大変ですね。
──そうですよね。お子さんがいらっしゃる生活ですとイレギュラーな出来事も多いと思いますから、集中して制作するとき間を作るのはとても大変ですよね。では逆に楽しかったことや嬉しかったことはありますか?
三毛 やっぱり自分の性癖を全面に出せていることが楽しいですね! 登場するメイドのリリーちゃんというキャラクターがいるのですが、彼女はメイドさんで、眼鏡で、褐色で三つ編みで、カタコトだけどズバズバ言う……など、もう本当に「好きなものを全部全部詰め込んだキャラクター!」みたいな感じで思い入れが強いので、リリーちゃんを描くたびに楽しくてテンションが上がります(笑)。
あとは「ニンゲンちゃん」と呼ばれていたちかちゃんを描くのも楽しいです。ちかちゃんのチャームポイントはなんと言っても身体ですね! 女の子らしい身体。
もう一人の主人公である「異形頭さん」と呼ばれているラズさんの魅力は顔と言葉遣いのギャップでしょうか。読者のみなさんもそこに魅力を感じてくださっているようでうれしく思います。ラズさんは外見がめちゃくちゃ怖いので、そこを本人も気にしていて柔らかくなるようにオネエ言葉を使うという設定があったりします。それぞれのキャラクターに過去の話やまだ描き切れていない設定などがあるので、これから楽しみではあります。
──たしかに、ここぞという真剣なときにラズさんの言葉遣いが変わるのが、ドキッとしてとてもいいですよね。ほかのキャラクターたちのバックグラウンドが深堀りされるかもしれないとお聞きしてそちらも楽しみです。ずいぶん先の展開まで構想がおありのようですが、物語は編集の方と検討されたりするのでしょうか?
担当編集H 私がお声かけする前からご自身で描かれていて、実際それが面白いですし読者さんにしっかりと刺さっているので、口出しはほとんどしません。もし今後の展開がずれていくような場合にはお話をすることもあるでしょうが、普段物語やラフなどは本当にお任せしているという状況です。書籍化で細かな修正などは軽くしますし、たまにこの先の展開でどういう期待感を持たせていくのかといったフィードバックを入れたりはします。
──普段ネタ集めやアイデアを生むためにどのようなことをしているのでしょうか?
三毛 普段からインプットを心掛けていろいろな映画を観たり本を読んだりはしているのですが、頑張って探しているときほど何も出てこないものですよね。お風呂に入っているときとか、リラックスしているときにぽっと出てくることが多いので、そういう時間をなるべく作るようにはしてますね。浮かんだら慌ててお風呂から出て忘れる前に描き出したりすることもよくあります。
──それでは最後に『異形頭さんとニンゲンちゃん』のおすすめポイントとあわせてQunnの読者へのメッセージをいただけますか?
三毛 本作の魅力はなんと言っても、ふたりが種族を超えてお互いが大好きというところにあると思います。この先、ふたりの真のイチャイチャは一体いつちゃんと読めるのかというところに注目していただければと思います。
現在、電子版では一部無料で読めるので興味があればぜひお試しいただき、癖(へき)が刺さったら紙の書籍も発売しましたのでそちらもどうぞよろしくお願いいたします。
担当編集H それぞれ異なる背景を持った異種族であるふたりがお互いに愛し合っているのは『ロミオとジュリエット』のようでもあります。序盤では両想いなのになかなか関係が進まないモダモダ感がニヤニヤできるポイントですが、話が進むにつれて少しずつ想いをさらけ出して濃密になっていくふたりの関係性が本作の最大の魅力のひとつです。
個人的には、オラついた感じなのに実は育ちがいいというラズさんの相棒であるクマさん(セオさん)とニンゲン(ナナさん)のカップルを推してます(笑)。
私もどちらかといえば一読者側の目線で日ごろ作品を作っていますが、こうして改めてお話を聞いていると、三毛たま先生の中にはたくさんの世界観が広がっているんですね。登場人物全員のキャラが立っていますし、まだまだ作品では掘り切れていないところがあると思っているので、ぜひ今後の展開にも注目しつつ電子版と紙書籍どちらもご購入いただければと思っております!
──本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
ライター後記
終始、三毛先生の人柄を感じるインタビューでしたが、作品はもちろん、表情が見えない「異形頭さん」の人気の秘密にほんの少し迫ることができたように思います。
また、映画や読書などで創造のインプットを行っているという三毛先生が、他の作家さんの漫画を読まれたり、民俗学の本を読まれたりしていると聞き、アイデアの源泉に触れたような気がしました。
pixivFANBOXの方では少し大人の『異形頭さんとニンゲンちゃん』が描かれているのですが、実は今回、三毛先生と編集担当Hさんに尋ねてみたところ、配信や紙書籍化への意欲をふと垣間見る瞬間がありました! こちらも近い将来、世に出る日が訪れるかもしれませんので、期待して待ちたいところです!!
6月21日には待望の『異形頭さんとニンゲンちゃん』単行本第1巻が発売となり、さらに8月9日〜12日には王子ドームホールにて、なんとシネマティックリーディングとして舞台化も!? 『異形頭さんとニンゲンちゃん』の世界はこれからますます勢力を拡大していく予感♡ 三毛先生、担当編集のHさん、貴重なインタビューをどうもありがとうございました!!
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