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『なつめとなつめ』『ハロー・マイ・ホーム』空翔俊介先生にインタビュー! 「実は一番好きなシーンはこれからです」

少女漫画インタビュー
『なつめとなつめ』イラスト
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

高校2年生の強面男子・棗とその幼なじみのイケメン女子・夏目の関係を描く『なつめとなつめ』

子どものころに両親を亡くしたたまをが自分と似たような境遇の少年・海と出会い、一緒に暮らすようになる『ハロー・マイ・ホーム』

優しい世界観が魅力の2作を手掛ける空翔俊介先生にインタビューを実施!

作品が生まれた経緯や、空翔先生が制作の際に大事にされていることなど、たっぷりと裏話をお聞きしました!

あらすじ

『なつめとなつめ』1巻 表紙画像
引用元:『なつめとなつめ』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

強面の男子高校生・不知火棗(しらぬい なつめ)の憧れの人は、幼なじみの水無月夏目(みなづき なつめ)

いつも凛としていてカッコイイ、ヒーローのような夏目。いつか、夏目のヒーローになることが棗の目標です。一方で、夏目も棗のことを尊敬していて……。

そんな棗と夏目の不器用だけれど真っすぐな恋と青春の物語です。

▼本作のレビュー記事はコチラ

『ハロー・マイ・ホーム』1巻 表紙画像
引用元:『ハロー・マイ・ホーム』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

そして、『ハロー・マイ・ホーム』は子どものころに両親を亡くし、親戚に心ない言葉をかけられ話すことが苦手になってしまった柏木たまを(かしわぎ たまを)が、似た境遇の少年・橘海(たちばな うみ)と出会うことで始まるストーリー。

海に自分を重ねたたまをが一緒に暮らし始めたことで、少しずつ変化していくふたりの世界を優しく、繊細に描きます。

▼本作のレビュー記事はコチラ

インタビュー

『なつめとなつめ』&『ハロー・マイ・ホーム』誕生秘話!

空翔俊介先生(以下、空翔) 2017年に、ある漫画雑誌で読み切り作品を描いてデビューしました。でも、その作品はアンケートの結果があまり良くなくて……。とにかくつまらなかったんです。

空翔 本当にボロボロに言われましたね(笑)。その後、KADOKAWAさんに声をかけていただきまして。そこで一回仕事を辞めて、「3か月だけがんばろう。ここでダメだったらもういいや」とチャレンジしたら、連載をさせてもらえることになりました。

空翔 『三白眼ちゃんは伝えたい。』という漫画が人気だったんですけど、ストーリー漫画というよりは、X(旧Twitter)の漫画の延長だったんです。それで、『なつめとなつめ』を連載することになったときに、ストーリー漫画が描けたらいいな、と思って取り組み始めたんです。

『三白眼ちゃんは伝えたい。』1巻 表紙画像
引用元:『三白眼ちゃんは伝えたい。』
©Shunsuke Sorato/SQUARE ENIX

担当編集・Y(以下、編集Y) 空翔先生は、ご自身の描く世界を読者に近い視点で見ていらっしゃると思います。そして、キャラクターの人生を描いていく上で、スナップ写真みたいに切り取っていくんですよね。その切り取り方がすごくうまくなっていらっしゃって。

以前、『なつめとなつめ』の動画を作ったんですけど、すごくいい動画が作れたんです。そのときに先生は漫画の作り方が少し動画クリエイターさんに近いのかな、と思いました。本当に流れるような描写を使うんですよ。それが『ハロー・マイ・ホーム』にもすごくマッチしていて。よりそのクオリティが上がっていってるのが分かります。空翔先生の担当編集になってまだ1年ほどで、生意気な言い方になりますが、漫画家さんとして成長期に入ってるのかなと感じています。

空翔 ありがとうございます!

以前作成した『なつめとなつめ』の動画

空翔 『三白眼ちゃんは伝えたい。』の中に、ずっとゴリラの被り物をしているキャラクターがいたんです。で、アシスタントのななせから「中身ってどんな人?」「描いてほしい!」と言われたのがきっかけで描いたのが、プロトタイプ版の棗くんです。さらに「この子の相手は誰?」「委員長っぽい子がいいよね!」と話しながら落書きをしていたら「このふたり、かわいいね」となって……。それで漫画を描いてXにアップしたら、前の担当さんからお声がけをいただいて連載が始まったという流れですね。本当に落書きから生まれましたね。

『三白眼ちゃんは伝えたい。』に登場するゴリラの被り物をしているキャラクター
引用元:『三白眼ちゃんは伝えたい。2巻』
© 空翔俊介 / スクウェア・エニックス

空翔 当時の担当さんから、「新作をもう一本やりたいです」「家族ものをやりたい、空翔先生が描く子どもが見てみたいです」と言われて決まりました。2本同時連載ですけど「行けるんじゃないかな?」という感じでスタートしました。約2年経ちましたけど、割と頑張れているかな、と思います。

「かわいい」がこだわり

空翔 『なつめとなつめ』は、実は行き当たりばったりな部分が大きいんです。最初はXに投稿した1話だけの作品で終わる予定だったので、続きのお話も新キャラクターもない状態でした。今も、作中の子たちがどうしたいのか、一緒に考えて描いています。

『ハロー・マイ・ホーム』の方は、大筋は大体決まっているのですが、細かいところはノープランで進めています。こちらも、描いていればそのうち何か話してくれるだろう、と作中のキャラクターたちに任せています。なので、ネームと全く別物が完成することもあります。コマ割りからキャラクターのセリフまで、何もかも変わっちゃうことがあって……。

空翔 いや、結構迷います! ですが、描きたいポイントさえ決まっていれば、続き物のストーリーだとわりとスラスラと描けちゃうこともあったり。シリアスな展開の場合、自分が苦手なこともあって悩むんですけど、描き始めるとキャラクターたちがいい感じに動いてくれて、最終的に「こんな感じになるんだ」と思いますね(笑)。なので、キャラクターたちに任せる部分が大きいです。

担当Y 空翔先生ご自身の魅力でもあるのですが、キャラクターを自分の都合で動かさないところですね。どんなにおいしい展開だったとしても「この子たちはこんなことはしないから」とおっしゃいます。

キャラクターの人生を描いているので作品にとても厚みがあるし、『なつめとなつめ』なら等身大の高校生を上手く描いてくださっています。漫画ではなく、あの子たちが映っているホームビデオを見ているような感覚で観ていただけるのが、一番の魅力なんじゃないかな、と個人的には思っています。

『ハロー・マイ・ホーム』は先生もおっしゃられていたように、伏線をいろいろと散りばめつつ、決まったラストに向かって走っている状態です。最終話まで読むと、1度目は「こういうお話でよかった」、2度目は「こんなところに伏線があったんだ」と。2度読んでおもしろいというところが魅力になるだろうな、と思っています。

空翔先生の作品全般において、キャラクター全員が幸せになれる物語を描かれるので、幸せになるために一つ一つを回収していくところも魅力ですね。『ハロー・マイ・ホーム』に関しては血の繋がらない、問題を抱えているふたりが幸せになれるのか?という、今の世間が抱える問題も含まれているので、そこにもぜひ注目していただきたいです。

空翔 「かわいい」がこだわりになるのかな、と思います。普段、直感的に描くことが多いので、候補を出すことがあんまりないんです。そのときに頭に浮かんだものをパッと描いちゃいます。なのでキャラクターデザインで悩むことがないですね。

あとは、ななせが「こういう子どう?」と提案してくれて「その子かわいいね!」となったキャラクターを採用することも結構あります。だいぶ助けられてます(笑)。

夏目が泣くシーン
引用元:『なつめとなつめ』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

空翔 最初の方だと、夏目ちゃんをすごく強い子のように描いていたんですけど、たぶん作中で一番弱い子です。だから、とにかく夏目ちゃんを好きになってほしいという思いがあります。『なつめとなつめ』は夏目ちゃんのための漫画ですね(笑)。

空翔 ふたりに何か共通点があるといいよね、という話になったんです。誰かが死ぬような話ってあまり好きではなくてずっと描いていなかったんですけど、1回やってみようか、という気持ちになって。それで前の担当さんに打診したらOKが出ました。

『ハロー・マイ・ホーム』回想シーン
引用元:『ハロー・マイ・ホーム』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

たまをちゃんが陰キャという設定は、たしか前の担当さんかななせか、どちらかのアドバイスで決まりました。それで描き始めたらうまい具合に1話目ができました。

空翔 夏目ちゃんと棗くんですね。あと、橋本っていう子がいるんですけど、その子かな。

橋本くん
引用元:『なつめとなつめ』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

アフロが好きで、アフロが主人公の漫画をずっと描きたかったんですけど、却下されていて。だからアフロが出てくるんですよ(笑)。

空翔 あるかもしれません!(笑)

2作とも一番いいシーンはこれからです!

空翔 「優しい」というところはもちろん大切にしていて、その上で読んだ人に「当たり前」を大切にしてほしいと思って描いています。漫画って特別な能力を持っていたり、特別なできごとが起こったり……。非日常的な、いろんなことが起こります。でも、たとえば好きな人がいて、一緒に話をしているっていうことは、日常にありふれたことだけどすごいことだと思うんです。他人同士が想いを通じ合って、両想いになるってすごいことじゃないですか?

棗と夏目の会話シーン
引用元:『なつめとなつめ』
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

空翔 そう、誰かのことを好きになって、さらに自分のことを好きになってもらうって大変なことだと思っているんです。一緒にごはんを食べたとか、優しくしてもらえたとか……。「当たり前」なことが一番大切なんじゃないかな、と思って漫画を描いています。

空翔 『フルーツバスケット』が本当に大好きで。崇拝しています(笑)。あの優しい空気感が好きで、影響を受けている部分が大きいと思います。

空翔 時間があればなんとかなる、という感じです(笑)。いまはこっちを描いて、次はこっち……みたいに、普通にやっていますよね?

編集Y 空翔先生だからできるんですよ!(笑) 「普通にやっています」とおっしゃいましたが、正直オリジナルで2作品連載を何年も……っていうのをできる方はほとんどいないかな、と思います。私のほうがついていくのに必死なぐらいです(笑)。

空翔 はい。「今回はこの子を書こう!」と考えて、パッと視点を合わせるようなイメージですね。特に切り替えるために意識していることはないです。

空翔 遊びすぎて時間がなくなったことがありました。「やばい! 〆切伸ばせないですか!?」って正直に言いました(笑)。

空翔 『なつめとなつめ』は、やりたいことがまだまだたくさんあるんです。いろはちゃんと八草先輩の恋の続きとか、新キャラの登場とか。読者さんの中には「本筋に関係ないじゃん!」って思う人もいるかもしれないんですけど、最終的に点と点だった物語が、『なつめとなつめ』の線上にクロスするのを楽しみにしていただきたいです。

『ハロー・マイ・ホーム』は……。もうラストが最高なので、そこまで楽しみにしていただけたらと思います。きっと、読後に「よかった!」と思っていただけるんじゃないかなと。

実は、どちらも一番好きなシーンがまだ描けていなくて、これからなんです!

空翔 そう、期待していただけると嬉しいです! 絶対にいいものになるので、そこに向けていま積み上げていっているところですね。

空翔 描けるかどうか分からないんですけど、ファンタジーを描いてみたいです。作画がめんどくさそうだな、と思うんですけど、それさえ乗り越えられたら(笑)。

編集Y 空翔先生の世界観だったら、本当にどんなものでも見てみたいです! 先生とは少し話したんですけど、画風的に和風系のお話なんかも親和性が高そうだなと思っています。何でも上手く落とし込んでいただけると思うので、いろんな世界を見てみたいです。

インタビューを終えて(ライターより)

今回お話を伺い、空翔先生の描く世界に共感できる理由が腑に落ちて、すぐに読み返したくなりました。

先生ご自身が優しい世界を愛されているのがきっと作品にも表れているんだな、と思います。
そして「夏目ちゃんがかわいい!」には思わず大きく頷いてしまいました……!

気になったのが、『ハロー・マイ・ホーム』のラストがすでに決まっているということ……! ラストに向けての伏線も満載ということで、これまで以上にしっかりとチェックしなくては、という気持ちに。5月10日に3巻が発売されるということで、皆さんもぜひチェックしてくださいね♪

空翔先生、担当編集・Yさん、貴重なインタビューの機会をありがとうございました!

サイン入りフルカラー色紙プレゼントキャンペーン!

『なつめとなつめ』カラー色紙
© 空翔俊介 / マイクロマガジン社

そしてなんと! 空翔先生がQunnのために『なつめとなつめ』のイラストを描きおろしてくださいました♡

キュートな夏目に、優しい表情で夏目を見つめる棗をつなぐ小指の赤い糸にきゅんとしてしまいます。セリフがなくても、ふたりの間に流れる温かな空気が感じられるようです。それにしても空翔先生が描かれる女の子はどうしてこんなにもかわいいのでしょうか……。

そんな空翔俊介先生による『なつめとなつめ』Qunn描き下ろしイラストを使用した、先生のサイン入りフルカラー色紙を5名様に当たるプレゼントキャンペーンを実施!

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