『忠犬ボディーガードが偽物令嬢の嘘と身体を暴くまで。』は、悪役令嬢に転生した健気なヒロインと、彼女に仕えるちょっぴり危険な最強ボディーガードの日常を描いたTL漫画です。
2023年10月24日に商業版の紙単行本が発売された本作は、2023年12月現在「DLsiteがるまに」にて配信中の同人版が累計20万DL、無料ボイスドラマ版は7.7万DLをそれぞれ突破。
グッズも展開され、勢いが止まりません。
そこで今回は、本作を世に送り出した漫画家・晴海にいな先生にインタビューを実施!
晴海先生のプライベート話や、本作の執筆裏話など、たくさん伺いました♡
※本作の同人版及びボイスドラマ版は成人向けコンテンツとなりますのでご注意ください。
※本記事の内容には、本作の同人版及び商業版単行本に収録されている描き下ろしおまけ漫画のネタバレを含みます。
あらすじ
乙女ゲーム『運命の花園』に登場するキャラクターのひとりである悪役令嬢・小鳥遊玲子(たかなし れいこ)の中身は、実はかつて『運命の花園』をプレイしていた“転生者”――!?
死亡ルートを回避するため、ボディーガード・一条鷹臣(いちじょう たかおみ)を手懐けながら、必死に悪評を払拭し続けてきた玲子。しかし本来のヒロイン・英小百合(はなぶさ さゆり)が登場したことで、鷹臣ルート……つまり玲子にとっては死亡ルートへ突き進んでしまいます。
そんななか、鷹臣と小百合を近づかせないため、玲子が思いついたのは「鷹臣の解雇」。だけど実行する前に鷹臣にそのことを知られてしまいます。さらには玲子が転生者であることもバレた後、“激しいお仕置き”が待っていて……。
玲子の秘密が暴かれたことで変わっていくふたりの関係性に注目を!
インタビュー
男性キャラクターは見た目と中身のギャップを作るようにしています
――初めて漫画に触れたのはいつ頃でしたか?
晴海にいな(以下、晴海) おそらく小学生くらいのときだったと思います。当時、児童館に置いてあった『花より男子』(神尾葉子/集英社刊)を全巻読みまして、「漫画ってこんな感じなんだな〜」と思った記憶がありますね。私は「週刊少年ジャンプ」作品などの少年系漫画も読むんですけど、昔から少女漫画が大好きなんです!
――影響や感銘を受けた作品がありましたら教えてください。
晴海 花とゆめコミックスの『暁のヨナ』(草凪みずほ/白泉社)です! ヒロインのヨナは、“女の子らしいかわいさ”と“イケメンな護衛たちを率いる強さ”を兼ね備えているんですけど、個人的にはそれらを両立しているところがカッコいいなと感じまして。彼女のようなヒロインを描きたいと思ったんです。あとは、イケメンの護衛たちがヒロインには刃向かえず、従っているというのもすごく萌えます♡
――では、ご自身がTL漫画を執筆することになったきっかけは何だったのでしょう?
晴海 大学在学中にたまたま執筆の依頼をもらって、『偏屈作家と官能小説のススメ』(商業TL漫画)という作品を描いたのが最初でした。そのときは「楽しそうだし、やってみようかな」と軽い気持ちで始めたんですよ。でも、編集さんと一緒にお話を作っていくうちに「漫画を描くのって楽しい!」と改めて実感しました! だからこそ連載が終わった後も、もっとTL漫画を描きたいと思いましたね。それからここまでずっと続けてきた感じです。
――お話にあがった『偏屈作家と官能小説のススメ』の制作を振り返ってみての感想や、見どころを伺えますか?
晴海 実はその連載が始まるまで、あまり漫画を描いたことがなかったんです。二次創作で同人誌を作った経験は何回かあったんですが……。なので一話一話描き上げるごとに、「ここはこういうふうに描いたら良いんだ」といろいろ学んでいったのを覚えています。それと結構TL漫画って、男性から女性にアプローチをするという流れが多いじゃないですか。だけどこの作品は、ヒロインがずっとヒーローに片想いしていて、なんとか彼に好きになってもらおうとするようなお話なんです。頑張るヒロインを見ることができると思いますので、そこもぜひ注目していただきたいですね!
――他には『変態ヤクザとアブナイ愛人契約~骨の髄までしゃぶられH』という商業作品も描かれていますよね。
晴海 そちらは、本当は「DLsiteがるまに」(以下、「がるまに」)で出そうと思っていた同人作品でした。かなりヤンデレチックなお話なのかなと(笑)。ヒーローの蓮弥(れんや)さんが漫画でよく見かけるヤクザとはちょっと異なっていまして。ヤンデレなところだけでなく、かわいいところもあるので、そういうギャップを楽しんでいただきたいです。
――作品に限らず、魅力的なキャラクターを描くうえで大切にされていることは?
晴海 私は毎回、最初に男性キャラクターから決めるんですけど、男性キャラクターは見た目と中身のギャップを作るようにしています。例えば『忠犬ボディーガードが偽物令嬢の嘘と身体を暴くまで。』の鷹臣の場合は、カッチリスーツを着ているけどピアスを付けていて。性格も無愛想で横暴なのに、ヒロインの玲子さんにだけは敬語を使うんです。
晴海 そういうふうにちょっとしたギャップを作るのが結構好きですね。私自身が、ギャップのある男性が好きなんです! それから女性キャラクターは、男性キャラクターに合いそうな子を感覚で選んでいるといいますか。あまりガチガチに決めてしまうと動かしづらくなってしまうから、ふんわりとだけ決めています。あとはもう脳内で男性キャラクターと絡ませつつ、ストーリーを作り、どんな感じになるのかな?と毎回見守っている感覚です。
――同人作品と商業作品を描くうえで、それぞれ心掛けていることはありますか?
晴海 同人作品は、ページ数に制限がないんです。なのでエッチシーンに持っていくまでに、今回のヒロインとヒーローはこういうキャラクターで、こういう会話をする、みたいなものをできるだけ入れるようにしていますね。キャラクターの関係性をしっかりと描くことで、エッチシーンの盛り上がりを高められるはずですし! 一方、商業作品ですと、やっぱり大事な部分が白塗りされちゃうので、そこはできるだけ映さないように気を付けています。それとトーンの塗り方や効果音とかで、どれだけエッチに見せられるかというのは、毎回挑戦しているところなのかなと!
「小鳥遊(“たか”なし)」と「鷹臣(“たか”おみ)」で対にしたらかわいいのでは……?
――ここからは『忠犬ボディーガードが偽物令嬢の嘘と身体を暴くまで。』について、お話を伺っていきます。まず、この作品が誕生した経緯を教えてください。
晴海 ちょうど当時「異世界転生もの」や「悪役令嬢もの」が流行っていまして、私自身が結構ミーハーなので(笑)、「そういうジャンルが流行っているのなら描いてみたいな」と思ったのが始まりでした。それと同時に「もし自分がそのふたつのジャンルで描くのなら、どういうものを描くだろう?」と妄想をして生まれた感じです。あとは個人的にスーツ姿の男性を描くのが好きで。せっかくならスーツ姿の男性を登場させたいと思ったときに「ボディーガードとか面白いんじゃないかな?」と頭に浮かんだんです。悪役令嬢 × ボディーガードがメインのTL漫画はあまり見かけなかったので、思い切って自分が描いちゃいました。他には乙女ゲームの世界にしたら、制限なしにいろいろなジャンルの男性キャラクターを描けるのでは?という考えもありましたね(笑)。
――登場人物たちのキャラ作りで印象に残っていることや、描くうえで意識していることを1キャラずつお聞かせいただけますか? 最初に、小鳥遊玲子からお願いします。
晴海 本作が初めての乙女向け同人作品だったので、とにかく自分が描きやすい女の子にするというのが第一にありました。優しい子のほうが描きやすかったので、あのような感じの性格になったんです。それとヒーローの鷹臣が怖い感じなので、ちょっと彼に怯えている女の子だったら面白いなという思いもありましたね。結果、女の子に好かれるタイプになったのではないでしょうか……? それから玲子さんは「きっと鷹臣はこういう表情が好きそうだな」と妄想しながら描いていますね。恋人同士になった後のエッチシーンで玲子さんが「私のために待ってくれてありがとう」というところとかでは、特に鷹臣の気持ちに寄り添いました。
――鷹臣が好きそうな表情をした玲子を描く際に、一番こだわっているところは?
晴海 “瞳”ですかね。少女漫画っぽくキラキラさせたりして、同性でもドキッとさせられるような感じにしたいなと思っています。
――ぜひ、キャラクター名の由来も教えてください。
晴海 お名前については、「この子は“レイコ”が似合う顔をしている」と感じて「玲子」になりました。私は結構パッと見の印象で名前を付けることが多いんですよ(笑)。彼女の本名である「千里(ちさと)」も、「鷹臣に千里って呼ばせたらかわいいかも!」と思って付けていて、実はそこまで深い意味はないんです。とはいえ、苗字に関しましてはこだわりがありまして。3文字にしたらお金持ちな雰囲気が出るのかなと。あとは「“たか”なし」と「“たか”おみ」で対にしたらかわいいのでは?と考えて「小鳥遊」になりました。
――続いて、一条鷹臣はいかがでしょう?
晴海 私はよく「がるまに」を利用しているんですけど、最初に「がるまに」で出そうとしたときも、そこでいろいろな作品を読みまして。そんななかで「典型的なヤンデレ男」が思い浮かびました。そのうえでかわいい玲子さんと脳内で絡ませていくうちに、彼女に引っ張られていって、どんどんかわいくなっていった気がします。“怖さ”と“かわいさ”が上手くミックスされて良い感じになったんじゃないかなと!
晴海 あとは『変態ヤクザとアブナイ愛人契約~骨の髄までしゃぶられH』の蓮弥さんもそうなんですが、動物とか“モチーフ”を入れるのが私は好きで。「鷹ってカッコいいな〜」から「鷹臣」になりましたね。且つ玲子さんが品のあるお名前なので、それに負けじと「臣」という高貴なイメージがある漢字を入れて、バランスを取りました。他にも裏設定といえば、エッチな話になってしまうんですけど……実は鷹臣はハメ撮りをしたいと思っています(笑)。でも玲子さんが嫌がりそうだからできない! 本人はわりと歪んでいるほうなんですが、玲子さんのことを思うとなかなか言えないといういじらしさもあるんです(笑)。
――その辺りもギャップを感じますね(笑)。では、英小百合についてもぜひ。
晴海 小百合ちゃんは“ゆるふわ系の当て馬ヒロイン”を作ろうとして、できあがったキャラクターでした。実は、最初はすごくヤンデレな女の子にしようと思っていたんですよ。玲子さんを取り合って鷹臣とバチバチに喧嘩する案もあったんです。だけど玲子さんと鷹臣の絡みが増えたほうが良いだろうなと考え直して、それらの案は没になり、今のような性格になりました。
――第二章ともいえる『学園編』では、イケメン御曹司・白鷺理仁(しらさぎ りひと)が新たに登場しました。
晴海 本当は続編を描く予定がなかったんですけど、「続編も見たい」と言ってくれる方が多かったので、それなら当て馬を出すのが一般的かなと思い、理仁さんが生まれました。それから玲子さんと鷹臣の障害にならないようなキャラクターにしたくて。いろいろ悩んだ末に、元の玲子さんのことが好きな元婚約者という複雑な感じになってしまいましたね(笑)。この作品の中では鷹臣が一番カッコよくあってほしいという願望から、彼とは真逆の見た目・性格にしました。あとは彼のお名前にも「鷺」という鳥を入れたり、輝かしい見た目をしているからこそリヒト(=ドイツ語で「光」という意味)にしたりしています。
――どのシーンも印象深いとは思いますが、皆さんに注目してほしいところをひとつ挙げるとしたら?
晴海 ボディガードを辞めようとした鷹臣を玲子さんが引き止めるシーンですかね。玲子さんが途中で転んじゃったときに、鷹臣が足を止めて振り向くんですけど、その行動が個人的にすごく気に入っています!
晴海 鷹臣は我が道を行くタイプじゃないですか。でも玲子さんのちょっとした言動でコロッと気持ちが変わっちゃう。結局、玲子さんには勝てないのが伝わってくるシーンのひとつになったと思います。
――ちなみに、玲子と鷹臣のエッチシーンを描くうえで気をつけていることは?
晴海 鷹臣は玲子さんに無理をさせたくないというのが大前提としてあるので、玩具を使うシーンや、キツい体勢は描いていません。個人的にはそれらを見たり描いたりするのは好きなほうなんですが、鷹臣が許してくれないといいますか(笑)。そういうことはしなさそうな性格だなと思い、セーブしている節がありますね。それと鷹臣はドSなのでときどき玲子さんに意地悪をするんですけど、その後にはちゃんと彼女に怒られているんですよ。そういうパワーバランスも大事にしています。
単行本の表紙では玲子さんが手綱を握っている感じにしたかったんです
――『忠犬ボディーガードが偽物令嬢の嘘と身体を暴くまで。』の紙単行本化が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
晴海 「同人作品でも単行本にしてくれる時代なんだ!?」と驚きましたけど、純粋にありがたいし、嬉しかったです! 表紙のイラストは新規で描き下ろしているのですが、ここではふたりの体格差をしっかりと分かるようにと意識しました。それから玲子さんが手綱を握っている感じにしたかったから、鷹臣に首輪を付けています。
――単行本に収録された描き下ろし漫画に関しても振り返っていただけますか?
晴海 私自身が、本当はすごく相手のことが好きなんだけど恥ずかしくて言えない、みたいな男性が結構好きで。鷹臣はそういうタイプだからこそ、本編での告白シーンのときは彼に「好き」と言わせたくないなと思ったし、実際言わせていなかったんですよ。だけど描き下ろしではせっかくなので、言わせてみようかなと! たくさん「好き」と言ってもらいました。
――他にも本作はボイスドラマ版の無料配信やグッズ販売など、さまざまな展開を見せてきましたね。
晴海 ボイスドラマ化が決まったときは本当にビックリしました! 女性向けのボイスドラマというと、自分は男性だけの声が入っているシチュエーションCDみたいなものを想像していたので、正直なところ、最初は鷹臣のボイスだけだったら断ろうと思っていたんです。でも玲子さんもいるということで「ぜひ!」と。実際に私も収録現場に立ち会いましたが、私が考えていたキャラクターの声そのものだったので、感動したのを覚えています。改めてやっぱり声優さんってスゴいな〜とも思いました。そしてグッズに関しては私のほうで作らせていただいたのですが、玲子さんと鷹臣が相合傘をしているアクリルスタンドが特に気に入っています。日常の一コマを切り抜いた感じにしたかったので、カメラ目線にはせず、ふたりで向かい合っているように描きました。
――本サイト名「Qunn」にちなんで、本作関連で最近胸キュンした出来事を教えてください。
晴海 小学校の頃からずっと仲良しな幼馴染みに今回の単行本を渡したとき、「昔からショートヘアーの女の子を描くの好きだったよね」と言われまして。「そんな昔のことも覚えているの!?」と驚いたことがあったんですよ。そのとき同時に胸がキュンとしました!
――最後に、可能な範囲で今後の展開について語っていただけますか?
晴海 今の段階なので変わる可能性が大いにあるのですが、ラスボスとして元の玲子さんを出してみたい気持ちがあります。元の玲子さんと鷹臣のバチバチバトルも描きたいですし! あとはやっぱりふたりのエッチシーンを、もっと描きたいですね♪
インタビュー当日の思い出(byライター)
本サイト「Qunn」での初インタビュー企画、皆さんいかがでしたか?
今回インタビュアーを担当した私自身、これまで漫画家さんにお話を伺う機会はあまりありませんでした。だからこそ本企画が決まったとき、すごく楽しみな気持ちでいっぱいだったのを覚えています。
そして迎えた当日。
和やかな雰囲気のなかでいろいろ質問をさせていただいたのですが、「ギャップのある男性が好きなんです!」という晴海先生のお言葉にはもう共感の嵐!
ギャップある男性、すごくドキッとしちゃいますよね! ほんと最高です♡
さらには「えっ、そうだったの!?」と驚いてしまうような裏話もたくさん飛び出して……。
特に玲子さん&鷹臣のキャラクター名の由来や、‘’鷹臣の(実現できない)願望‘’が話題に上がった瞬間のその場の盛り上がりは、数ヶ月経った今でも忘れられません(笑)。
晴海にいな先生、一時間以上たっぷりとお話いただきありがとうございました!!
サイン入りグッズプレゼントキャンペーン(終了済み)
※本キャンペーンは終了いたしました。たくさんのご応募、ありがとうございました!
晴海にいな先生のサイン入りアクリルカードが抽選で3名様に当たるプレゼントキャンペーンを実施します。
Qunn公式Xの固定ポストを引用の上、インタビュー記事の感想を書いて投稿してください!
応募期限は2024年1月31日(水)までなので、お忘れなくご参加くださいませ!
▼本作のレビュー記事はコチラ
▼本作の関連情報は以下もチェック!
▼関連リンク