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最終回となる第4回「TL統計」。感情の変化やベッドシーンでの触れ合い方などを集計しました

連載
TL統計 2024

こんにちは。最近の人気TLの単行本40冊分、264編を調査していくTL統計。「TLあるある」を数値化して、新たな発見をしていただければと思います!

第3回では、キャラクターの関係性について述べました。最終回となる第4回では、ヒロインとヒーローふたりの感情の変化や、実際にどんな愛情行動(意味深)をしているのかを調べてみました。

それでは、どうぞ!

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話が進むにつれて、ふたりの感情はどう変化する?

図1 関係を深めることへの積極性
図1 関係を深めることへの積極性

まず、関係を深める積極性について。相手と関係を深めたいと思っているか、それが言動に表れているのかを集計しました。「どちらかといえば積極的」も含みます。

図1を見ると、まずヒーローがヒロインに対してグイグイと積極的になっていることがよく分かります。その積極性に最初は翻弄されているヒロインも、押されて徐々に積極的になっていくことがグラフから読み取れます。ただ、終盤になっても3割程度のヒロインはまだ消極的。ここは相手のヒーローのことが気に入らないというわけではありません。2巻以降に続く作品では、ヒーローに対して好感は持っていても、まだ自分の気持ちに素直になれないヒロインが描かれていました。そこでは、たとえば「ヒーローはなんで私のことを気にかけてくれるんだろう」という戸惑いや「私なんかが一緒にいる資格がない」という自己抑制などが見られました。

ヒーローに告白されたヒロイン。好感を持ってはいるが、その告白を受け入れることに抵抗がある。そこには彼女の抱える事情があって……
(『その警察官、ときどき野獣!』虎井シグマ/一迅社)
ヒーローに告白されたヒロイン。好感を持ってはいるが、その告白を受け入れることに抵抗がある。そこには彼女の抱える事情があって……
引用元:『その警察官、ときどき野獣!』 (C)虎井シグマ/一迅社

TLの王道展開としては、ヒーローからの気持ちがヒロインの心を開かせていく、という形になっています。さて、それでは関係を深める動機について見ていきます。

図2 恋愛動機の変化
図2 恋愛動機の変化
図3 快楽動機の変化
図3 快楽動機の変化
図4 外的動機の変化
図4 外的動機の変化

これらのグラフは、ヒーローやヒロインがお互いの関係を深めるための動機と、その変化について示したものです。恋愛的な関係を深めたいという動機(=恋愛動機)、体の関係による快楽を得たいという動機(=快楽動機)、そして相手と関係を深めることで何らかの利益(子どもだけ欲しい、家を守るため)が得られるという外的な動機(=外的動機)に分けています。これら3つの動機では、恋愛動機が最も高くなっており、快楽や外的な利益を求めて行動するキャラクターは少なくなっています。

まずは、恋愛動機について。こちらは物語が進むにつれ徐々に高まっていくという傾向が見えます。ヒロインは序盤では27%程度とそれほど高くない数字ですが、終盤に向けて高くなっていきます。ヒーローの恋愛動機は元から70%以上と高めではありますが、そこから終盤に向かってさらに上がっていく傾向があります。ヒーローからの熱烈な愛情で、徐々にヒロインの心もなびいていく……というストーリーが目に浮かびます。

悪役令嬢に転生したヒロイン。バッドエンド回避のために出会ったばかりのヒーローとの結婚を受け入れる。当初は外的な利益のための動機で動くが、ヒーローの愛情によって徐々に恋愛的な動機が芽生えてくる。(『悪役令嬢は傲慢伯爵に屈しない』©安里瀅/三交社)
悪役令嬢に転生したヒロイン。バッドエンド回避のために出会ったばかりのヒーローとの結婚を受け入れる。当初は外的な利益のための動機で動くが、ヒーローの愛情によって徐々に恋愛的な動機が芽生えてくる。
引用元:『悪役令嬢は傲慢伯爵に屈しない』©安里瀅/三交社

そして快楽動機については、なかなかに面白い結果が出ています。ヒーローからは、最初はそこそこありますが、終盤に向けておとなしくなっていきます。最初こそ「女だから」という理由で快楽を求めていたのが、徐々にヒロイン自身の魅力に気が付いて、体だけでない部分を求めて行動する、というところでしょうか。集計してはいないのですが、「すまない、ガマンできそうもない……!」とヒロインに対して謝りながら……というパターンは序盤に多く、終盤ではそういった「がっついた感じ」が減っていく印象です。対してヒロインは、徐々に快楽動機も増えていることが興味深いです。最初はそんな気がなかったのに関係を持ってしまったヒーローに対して「……もしかしてハマっちゃってる……!? いやいや、そんなはずは……」と、徐々に陥落していっている様子がいくつかの作品で描かれていました。

最初は快楽動機から関係をスタートさせたヒロイン。一度「性欲解消」をしたものの、自分がドンドンとヒーローにハマっていくことを実感している。(『九条さんは一晩中抱けるド絶倫 豹変男子のイキすぎ絶頂テクニック』© 星月奏 / オーバーラップ)
最初は快楽動機から関係をスタートさせたヒロイン。一度「性欲解消」をしたものの、自分がドンドンとヒーローにハマっていくことを実感している。
引用元:『九条さんは一晩中抱けるド絶倫 豹変男子のイキすぎ絶頂テクニック』© 星月奏 / オーバーラップ

外的な利益を求めるパターンは、借金してしまったから仕方なくとか、子どもを作るために仕方なく、などいくつかパターンがありましたが、共通しているのは物語の序盤では外的な動機が見られるものの、終盤に向かって減っていくということです。これは、物語のきっかけを作るための装置として機能しているということでしょう。最初は「子どもを作るだけの契約を結んだ」などで関係をスタートさせて、その後に徐々に恋愛感情が増していくという流れが見えます。最初の駆動をさせるために外的な動機が設定されていて、徐々に外的な利益はどうでもいいから一緒にいたい、と変化していくのだと考えられます。

セリフを種類ごとに集計!

図5 セリフの種類別集計
図5 セリフの種類別集計
図6 他者からの言葉(第1話)
図6 他者からの言葉(第1話)

さて、次はセリフについて見ていきます。キャラクターがどんなセリフを言っているかについて集計しました。1話の中で「言った」「言わない」の集計になるので、一言つぶやいただけの場合と、数ページにわたってほめ言葉を発した場合、どちらも同じものとして扱っていることだけご留意ください。

まず愛の告白。日常的に伝える「好き」というよりは、「ずっと前から君のことが好きだったんだ!」という一世一代の愛情表明ですが、ヒーローからの告白の方が多いという結果になっています。ヒーローからの愛情で関係性が動いていく……という話は上述しましたが、セリフの面でも裏付けられています。

自分を卑下するヒロインをほめるヒーロー。ヒーローは素直に好きが言えないままヒロインの「セフレ」になってしまっている
(『抱けど暮らせど「好き」が言えない』© 才手けい / ブライト出版)
自分を卑下するヒロインをほめるヒーロー。ヒーローは素直に好きが言えないままヒロインの「セフレ」になってしまっている
引用元:『抱けど暮らせど「好き」が言えない』© 才手けい / ブライト出版

ほめ言葉についても、ヒーローからのセリフが多くなっています。ヒロインがどんなに美しいか、もちろん容姿だけでなく、どれだけ美しい心をしているのか、ヒーローは理解してくれています。図6の他者からのセリフも併せて考えると、ヒロインは周りからは攻撃される傾向にありますが、ヒーローはそれを理解し、さらに気持ちを回復してくれる存在であることも見えてきます。他の誰にも理解されずとも、彼だけはヒロインのことを理解している……という包容力&特別感が、ヒーローの魅力であると言えます。

双子のヒーローたちから求められているヒロイン。片割れから抱かれつつ、もう一人のヒーローからかかってきた電話に出るという鬼畜な言葉責め展開にドキドキ
(『幼馴染は一卵性の獣』(C)あわいぽっぽ/さくら蒼/笠倉出版社)
双子のヒーローたちから求められているヒロイン。片割れから抱かれつつ、もう一人のヒーローからかかってきた電話に出るという鬼畜な言葉責め展開にドキドキ
引用元:『幼馴染は一卵性の獣』(C)あわいぽっぽ/さくら蒼/笠倉出版社

一方で、ヒーロー又はヒロインからのけなし言葉はほとんど登場しません。登場する場合は主に序盤で登場しますが「なによアイツ!ヤなやつ!」的なツンデレのツンの部分と言いましょうか、後々ひっくり返される前提のけなし言葉でした。お互いに惹かれ合っていくのがTLの大きな流れですので、けなし言葉が飛び交うケンカというものはほとんど見られませんでした

ですが、ヒーローがヒロインに対して鬼畜になることがあります。そうですね、ベッドの中です。そこではヒロインに対して、アレやコレやの言葉責めをしていきます。Qunnはとても健全なサイトなので、とてもではないですが載せられない言葉が多いのですが、そういった言動も普段の愛情表現やほめ表現があってこそ。本気で愛しているからこそ素を見せてヒロインを煽るのでしょう。それに対して、ヒロインは羞恥……つまり「こんなの恥ずかしい」と返すしかないのです。

ふたりの愛の確かめ合い方、ヒーローの愛情行動

図7 愛情行動
図7 愛情行動

図7はふたりが愛を確かめ合うためにヒーローとヒロインがどのような行動をしたかを集計した結果になります。まずは手つなぎやキスなど、ふたりで行う愛情的な行動から。

エピソード単位で見ていくと、最も多いのは舌を入れるディープなキス。これは愛撫の一環として行われるものであるという印象です。濡れ場に入る際のキスであったり、またラストで果ててしまうときに行われたりする行為として登場していました。逆に、舌が絡まないで終わるキスはやや少なめになっています。ちなみに舌を入れる入れない関係なしにキスが行われるのは、エピソード全体の71.2%でした。愛情の確認行動としてキスは欠かせないものなのだと考えられます。

会社の上司ヒーローがヒロインに対して再度の告白をする場面。会社での悪い噂を断ち切るため、大勢が見ている中で抱き合いながらキスをする(『幸せの青い鳥』© 山口ねね / 宙出版)
会社の上司ヒーローがヒロインに対して再度の告白をする場面。会社での悪い噂を断ち切るため、大勢が見ている中で抱き合いながらキスをする
引用元:『幸せの青い鳥』© 山口ねね / 宙出版

また、手をつなぐ、というのも愛情表現として考えています。「強制的にキスをする」はあっても、「強制的に手をつなぐ」というのはあまり見られないので、対等な愛情を示すための行動であると考えられます。そんな手つなぎが見られたのは全エピソードの40%程度。ここには「デートのときに外で手をつなぐ」場合もあれば、手をつなぎながら性行為を行う場合も含まれています。キスを含めて、粘膜の接触には快楽を求めて行うという側面がありますが、手をつなぐことには心理的なつながりを求めて行われるという意味合いがより多くなるのではないかと考えています。男性向けの大人マンガも研究しているのですが、そちらでは手つなぎの登場割合が17.1%となっており、TLではより精神的なコミュニケーションが求められているともいえるでしょう。

クールな年上ヒーローと、天真爛漫なヒロイン。手をつないで歩けることを喜ぶヒロインと、その素直な愛情に動揺してしまうヒーローの対比が素敵な場面(『君は俺の妻になるのだから』(C)篁ふみ/井上美珠/プランタン出版)
クールな年上ヒーローと、天真爛漫なヒロイン。手をつないで歩けることを喜ぶヒロインと、その素直な愛情に動揺してしまうヒーローの対比が素敵な場面
引用元:『君は俺の妻になるのだから』(C)篁ふみ/井上美珠/プランタン出版
図8 ヒーローからの愛情行動
図8 ヒーローからの愛情行動

そして、ヒーローがどんな行動をとってヒロインへの愛情を示すのかという部分も気になるポイントです。今回は「髪を触る(「頭を撫でる」を含む)」「抱きしめる(お姫様抱っこやバックハグ、一方的なもの)」「壁ドン」を集計してみました。

家が火事になったヒロインと、幼馴染の消防士ヒーロー。彼の家に一時的に厄介になることになったが、ヒーローは野性の魅力で迫ってきて……という場面でのバックハグ。ヒーローとヒロインの体格差も表現されている(『指先から本気の熱情~チャラ男消防士はまっすぐな目で私を抱いた』川野タニシ / 彗星社)
家が火事になったヒロインと、幼馴染の消防士ヒーロー。彼の家に一時的に厄介になることになったが、ヒーローは野性の魅力で迫ってきて……という場面でのバックハグ。ヒーローとヒロインの体格差も表現されている
引用元:『指先から本気の熱情~チャラ男消防士はまっすぐな目で私を抱いた』© 川野タニシ / 彗星社

割合としては、「抱きしめる」が多くなりました。ここには「お姫様抱っこ」や「バックハグ」なども含まれています。こういった抱きしめは、ヒーローのちょっと強引な愛情を示せる行動と言えそうです。バックハグなどは典型的な例で、後ろから抱きしめられるという不意打ちなドキドキ感と、そして背中を守ってもらえる安心感と、そういった相反した感覚を味わえる描写なのだと考えています。TLのヒーローの魅力は、そういった危うさと安心感の同居といいますか、「一緒にいて安心できるというのが前提だけど、それはそれとして自分の前でだけ見せるワイルドさも欲しい」という感覚が表現されているのだと思います。「お姫様抱っこ」については、かなりの腕力が必要な行為かと思いますが、ヒーローたちは軽々しく実行しています。なお、ヒロインたちはお姫様抱っこをされて驚くような描写が多くあり、そのお姫様抱っこに協力している様子は見られませんが、現実では女性側もかなりの筋力が要求されます。そこを無視してお姫様抱っこを実施できるヒーローの筋肉……すごいと思います!

大正時代、軍人であるヒーローの妻になったヒロイン。自分自身を卑下する彼女に、髪に触れながら「蔑むな」と認める場面(『孕むまで乱れいけ〜身代わり花嫁と軍服の猛愛』神崎柚 / 彗星社)
大正時代、軍人であるヒーローの妻になったヒロイン。自分自身を卑下する彼女に、髪に触れながら「蔑むな」と言う場面
引用元:『孕むまで乱れいけ〜身代わり花嫁と軍服の猛愛』© 神崎柚 / 彗星社

また、「髪を触る」については優しくヒロインの心に寄り添うときに表れた行動であると思います。優しく頭を撫でてあげたり、髪を梳いたりしつつ、ヒロインの悩みなどに寄り添って、彼女を認めてあげるような言動をしていくという流れがありました。そういった寄り添える人格も、ヒーローには必要なのでしょう。

エッチに誘うのはどっちから?

図9 行為への誘い方・同意
図9 行為への誘い方・同意
図10 誘い方の変化
図10 誘い方の変化
図11 同意の変化
図11 同意の変化

ここは濡れ場の集計ですが、あまり過激にならない範囲……ギリギリ電車の中で読めるか読めないかくらいのボーダーラインを狙って書かせていただきます。

まずグラフにはしていませんが、舐めたり挿れたりなど、何らかの行為が行われていたのは全エピソードの76.1%。4話に3話は何らかの濡れ場が描かれていました。そのうち、どちらから誘い、どうやって同意しているのかを示しているのが図9です。

部屋のドアを開けた瞬間に抱きしめ&壁ドン&キスで襲ってくる幼馴染ヒーロー。ヒロインもわずかには抵抗するが、流されている(『黒弁護士の痴情 世界でいちばん重い純愛』すみ/ぶんか社)
部屋のドアを開けた瞬間に抱きしめ&壁ドン&キスで襲ってくる幼馴染ヒーロー。ヒロインもわずかには抵抗するが、流されている
引用元:『黒弁護士の痴情 世界でいちばん重い純愛』© すみ / ぶんか社

誘い方を見ると、8割以上がヒーローからの誘いで行為が始まるようになっています。また、行為についても誘うのはヒーローからであることが多いようです。ヒロインから誘ったり、なし崩しに始まったりするパターンも見られましたが、これらは後半に多く見られました。最初にヒーローがちょっと強引に迫り、それを徐々にヒロインが受け入れていく、というのは関係に対する積極性の項目でも述べましたが、行為についても徐々にヒロインの積極性が上がっていく傾向が見えました。

同意についても、同じことが言えそうです。合計としては事前の合意がある行為が多いのですが、序盤は事前の合意がなく、あとで許すようなパターンが多くなっています。ヒーローが熱烈に求めてくるというところから物語が始まっています。冷静に考えると住居不法侵入をしていたり、「やめて」と言ってもやめなかったり、下手したら法的に問題がありそうな描写がある場合もあるのですが、ヒロインが本気で嫌がっている作品がほとんど見られない(一件だけ拒否感のある描写がありましたが、それも後で許していました)こともあり、その強引さは不幸な感情を引き起こすものではなさそうです。

そういった意味では、ヒロインが安心できるギリギリのラインをヒーローは見極めて、スリルを与えてくれるのでしょう。ジェットコースターのような、安心感を前提としたスリリングな恋愛を求めていると言ってもいいのかもしれません。

図11 行為の場所
図11 行為の場所

場所についての集計では、半数近くがヒーローの自宅でした。ヒーローが自分の領域にヒロインを連れ込んで……という展開が多かったです。ちょっと強引さを出しつつ、ついでにヒーローが素敵な家に住んでいるというのも描写する形になっていました。集計はしていませんが、タワマン住みや、普通のマンションでも小綺麗な部屋に住んでいる場合がほとんどで、狭いアパートや汚部屋に住んでいるというパターンは見られませんでした。次いでヒロイン自宅やホテルなど、基本的にふたりっきりになれる環境で行為が行われる傾向でした。

ヒーロー自宅にて初めてのお泊まりの後のシーン。窓から高層ビルが見える好立地に住んでいる様子が見られる(『不埒な社長はいばら姫に恋をする』冬野まゆ・Carawey/アルファポリス)
ヒーロー自宅にて初めてのお泊まりの後のシーン。窓から高層ビルが見える好立地に住んでいる様子が見られる
引用元:『不埒な社長はいばら姫に恋をする』©冬野まゆ・Carawey/アルファポリス

オフィス、屋外、車などの「誰かが来るかもしれない」という状況下での行為もありましたが、それらは中盤以降で登場する一種のスパイスとして機能しているように考えられます。

図12 ベッドシーンでの愛情行動の変化
図12 ベッドシーンでの愛情行動の変化

一応、全年齢向けメディアを名乗るQunnで、あんまり露骨なのは……と思いつつ、ギリギリのラインを攻めるグラフです。ベッドシーンで、おへそより下によってどんな愛情行動が行われていたのかを示しています。触れるというのは手だけでなく、舌を使って触れた場合も集計しています。どこに触れたのかというと……聞いてはいけませんよ!(お察しください)

Sなヒーローと、Mなヒロイン。性癖が明確になっている作品は少ないですが、ヒーローはSであることがほとんど(『抱けど暮らせど「好き」が言えない』才手けい / ブライト出版)
Sなヒーローと、Mなヒロイン。性癖が明確になっている作品は少ないですが、ヒーローはSであることがほとんど
引用元:『抱けど暮らせど「好き」が言えない』© 才手けい / ブライト出版

さて、ヒーローが触れるパターンが圧倒的に多く、ヒロインから触れるという描写はほとんど見られませんでした。特に序盤はその傾向が顕著で、ほぼ一方的にヒーローから触れるだけになっています。終盤でもヒロインから触れることは少しだけで、ヒロインが攻め気を出すとヒーローから手痛い「反撃」を受ける場合がほとんどでした。TLにおいて、ヒロインは受け身的な立場であり、ヒーローの熱烈な愛情を、文字通りその身に受ける形になっています。ヒーローは自身の身体的な欲求よりも、ヒロインを攻めることを第一としているのでしょう。SはサービスのS、という意味で、ヒーローはドSであると言えそうです。

また、ひとつになる行為については、序盤から終盤にかけて増えていく様子が見られます。これはふたりの関係が深化したことを示すため、行為についても徐々に深化していくよう、序盤では温存している作品も少なくないためです。ふたりの愛情関係はまだまだ深まっていく……という、その先を表現する効果もあるかもしれません。

まとめ

そんなわけで、4回にわたってお届けしました「TL統計」、いかがだったでしょうか?

TL愛読者の方々にはTLあるあるを、そんなに読んでいない方にはTLの世界を知ってもらいたいという意識でお送りしてまいりました。何か面白い発見はありましたでしょうか? ぜひ感想などございましたら、SNS等でつぶやいていただければと思います!

統計を終えて、TLの魅力は幸せが確保された状態でのスリルだと感じました。まず、ヒーローが一途にヒロインのことを愛してくれるという“安心感”。そして、「高収入」や「仕事ができる」などのこれから先の未来で生活する上での“安定性”。このふたつによって、ヒーローはヒロインに幸せな未来を予感させてくれています。そのうえで、でも愛情を示す際にはちょっと強引に迫ってくる……そんなスリリングなドキドキ感を楽しんでいくジャンルなのでしょう。

TLジャンルは近年盛り上がりを見せており、これからが楽しみなジャンルでもあります。TLの研究をしている人間として、今後も注目していきたいと思います。「TL統計」は一旦今回で終わりですが、これからも個人的に研究する機会を作りたいと思っているので、またお目見えする機会がございましたら、よろしくお願いします!

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Writer
牧田翠

マンガの表現をひたすら数えて語る統計エンターテイメント同人誌「エロマンガ統計」を2007年から執筆する野生の研究者。マンガ、ゲーム、ラノベ、BL、同人誌などにおける描写を集計し、分析している。

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